「肩書き」がなくなっていく時代の自分の見つけ方

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転職を考えるとき、これまで「〇〇社のAさん」だった自分が、〇〇社という「肩書き」がなくなったら周りの反応はどう変わっていくのだろう? と不意に不安な気持ちに駆られたりしませんか? 

これまでお話ししてきた「母親の呪い」と同じで、私たちは“自分”というものを、「〇〇さんちの娘のAちゃん」「〇〇学校卒のBさん」という風に、家庭や学校、職場、地域コミュニティなどの「肩書き」によって自己紹介を済ませられる、という保護のなかで生きてきました。しかし時代の変化の中で「肩書き」は、あなたを表現し、説明してくれるというものではなくなりつつあります。

さらに、現代はもはや「村のみんなで助け合って生きる」という時代ではなくなり、そのため「別に自分を救ってもくれない共同体に、期待なんかしない」という白けた気分が人々に蔓延しています。では、これからは何が、我々を守ってくれるのでしょうか?

一方で、マズローの5大欲求にも数えられるように、所属欲求自体が失われたわけではありません。所属することの心地よさは求められています。だから、様々なパーティ文化が広がったり、盆踊りがブームになったりするのだと思います。

でもそれらは、一時的な消費です。ではこの所属欲求をどうやって持続的なものにして、「応援しあう仲間」のような新しい共同体を求めていくのか? 所属している「肩書き」があなたの自己紹介をしてくれない中で、どうやってあなた独自の自己紹介を見つけていけばいいのか? その需要に応えているのが、今話題を集めているインターネットサービス「SHOWROOM」なのだと思います。

SHOWROOMと甲子園野球

SHOWROOMとは、タレントから一般人まで、誰でもインターネットで生配信ができ、さらに視聴者(ファン)とも交流できる双方向型のプラットフォームです。PCやスマホから気軽に配信でき、ファンはお気に入りのアイドルを直接応援することもできます。アイドルの中には、月間売上が1000万円を超える方もいます。

SHOWROOMは、甲子園野球の熱狂にとてもよく似ています。高校野球は、そこで走っているバッターもピッチャーも、別に親戚でもなんでもないのに、ただ“おらが県の代表”ということだけで、選手たちの熱意を応援したくなるし、応援される期待感のなかで、選手たちも実力以上の力を発揮できたりします。

その結果、今までなし得なかった目標を達成した時に、頑張っている方も応援している方も、同じ陶酔感を得ることができるのです。推して推されることで高めあう高揚感が、そこにはあります。

一方で、これは「都道府県」という共同体の幻想の上に成り立ってきた熱狂です。さらに、野球の試合2時間のために熱狂し続けるほど、みんな暇じゃなくなってきた。そこで、甲子園の熱狂やそこにコミットするタイミングを、圧縮させた濃厚な経験として与えているのがAKB48だと思います。
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文=尾原和啓

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