それから3年経った今、iOS版「We Read Too」のダウンロード数は2万を超える。先日はアンドロイド版も公開された。
トーマスは少女の頃から、起業家精神が旺盛だった。小学校3年生でアクセサリーの販売を始め、高校在学中に女子生徒を対象とした理系の合宿プログラムを創設。ダートマス大学ではアプリ開発を学び、1年生のうちにタイム社でインターンを経験して、アイデアを具体的な形にする術を身につけた。
「昔から自分の意思で動くタイプだった。常に主導権を持ち、何かをやりたいとか誰かを助けたいと思った時は、必ずその方法を見つけ出してきた」とトーマスは話す。
彼女はまた、昔から熱心な読書家でもある。しかし黒人の少女にとって、本の登場人物に自分を重ね合わせることは困難だった。「誰にとっても高校時代というのは、自分の見た目や内面に自信が持てなくなる時期。私はあらゆる本を読み、自分に似た人物を探したけれど、見つからなかった」
iOSアプリの開発者となったトーマスは、この問題を解決することにした。まず、著者と主要登場人物がアフリカ系、ラテン系、アジア系、ネイティブアメリカンの小説のリストをWordファイルに書き出し、それを公開するアプリを作った。
「その内容を見るのに、どんなハードルもあってはならない」というトーマスの考えにより、アプリは無料だ。本人が作ったiOS版が評判になり、アンドロイド版を望む声が高まると、トーマスはクラウドファンディングでエンジニアを雇う資金を集めた。「人々にお金を無心するようで、クラウドファンディングにはためらいがあった。でも(このアプリには)ニーズがあり、その必要性を感じる人たちが助けてくれるのだと気づいた」
起業家たちに贈る3つのアドバイス
「We Read Too」が扱う本のデータベースは拡大し続けている。開始時は300冊だったが、ユーザーの投稿により、現在は約800冊に増えた。トーマスのゴールは、有色人種によるすべての児童・少年少女向けフィクションを網羅することだ。そしてそれらの本に「保育士、教員、司書といった人々がよりアクセスしやすくなる方法」を模索している。
そんなトーマス流の問題解決の方法は次の通り。
1. 自分の周辺をリサーチする
「問題が何であれ、自分の身の周りを見渡し、同じ課題に取り組んでいる団体や人物がいないか探すこと。今いるコミュニティの中で解決できるのが理想」。ただし、同志が見つからなくても落ち込む必要はない。他にいないということは、パイオニアになれることを意味する。
2. 仲間を見つける
コミュニティはインターネット上にも存在する。「私にとってオンライン仲間はとても大切な存在。アプリを作る時も、広める時も、彼らが助けてくれた」
3. 小規模から始める
「小さな規模で始めることは非常に重要で、最初から『100万人に広めたい』と考える必要はない。もちろん目標を高く持つことは素晴らしいけれど、実現するのは難しい。私は目標を低く設定することで、落胆を免れることができた」