ビジネス

2017.12.11

きっかけは米国での原体験 「出張手配」の簡素化を目指す

エンジェル投資家の杉山全功(左)と細谷智規 ボーダー代表取締役社長(右)

細谷智規が2014年8月に創業したボーダーは、海外出張の申請、手配、工程管理をオンライン上で完結できるサービスを提供する。

同社スタッフが、バーチャルアシスタントとして必要な手配をクラウド上で代行。出張予定の社員は航空券やホテルの仮押さえをチャットで相談、法人の管理部門は社員の出張状況や安全管理を一覧できる。テロ増加を受け、今後は危機管理サービスも充実させていく方針だ。

エンジェル投資家の杉山全功は、15年春に投資を実行した。


杉山:初めてお会いしたのは2015年春です。私が以前投資したバスケット社長の松村映子さん(アパレル大手ストライプインターナショナルが買収)に紹介された形でした。

その時のボーダーはまだプロトタイプを開発している段階でしたが、細谷くんには、何度もビジネスを生み出せる起業家としての素養を持ち合わせていると感じました。何が何でも成功させようという思いに加え、ビジネスモデルの思考に再現性が富んでいたのです。その時のニーズを掴むだけでなく、経験則を将来的に活かしていく再現性を持っていることは重要です。

細谷:現在のサービスは、私が2年間アメリカに住んでいたのが原体験にあり、業界経験がないからこそ、今までと違う仕組みが作れると考えました。例えば、我々のオペレータースタッフ20人は全員在宅ですが、旅行業界では異例。細切れな働き方ができれば、会社とスタッフ双方にメリットがあります。地方で働きながら、東京の仕事もできるということで、今では地方自治体からもお声がけいただいています。

杉山さんとの初対面で印象的だったのは、「コミットしなければ出資はしない」と言われたことでした。大御所かつ人気の投資家なので、中々お時間をいただけないイメージだった分、それを聞いて安心しましたし、ぜひお願いしたいと思いました。

杉山:投資業を生業としているつもりがなく、一緒に成長できる起業家ないしは企業と関わりたい思いが強くあります。細谷くんは社会人経験を積んでおり、アイデアや勢いで突き進むタイプとは違った“バランスの良さ”を感じました。BtoBビジネスのスタートアップが大手企業と取引していく上では、バイタリティを秘めつつ、作法を理解していることが大事だと思います。

細谷:16年6月、法人の海外出張に特化してサービス公開しましたが、その1年後には月次の売り上げが当初の約15倍になりました。しかも、企業の継続率は100%。海外出張は目的地へ経済合理的に行き、決まった滞在時間の後は帰るだけなので、シンプルです。

杉山:将来的には、一部をAI(人工知能)化できるでしょう。人によって航空会社や時間帯などの好みは異なりますが、ある程度パターンが決まっています。ニーズが高い上、社会的にも意義あるサービスなので、会社としてのステージも、経営者としてのステージも、ギアを上げていくことを期待しています。

細谷:今のバーチャルアシスタントを軸に、今後は一貫性により厚みをつけたインフラ役を目指します。大企業でも、フライトや宿泊先などの出張情報を一元的に集約できていない状況なので、それらを整理しつつ、出張に伴う危機管理サービスも充実させます。テロなどの有事があった時、本人と関係者がスムーズにコミュニケーションできるよう、我々が橋渡し役を担いたい。

我々のゴールは、出張工程全ての簡素化であり、海外出張先でも日常と同じようなパフォーマンスを出せる環境を作り出すことですから。


すぎやま・まさのり◎日活 取締役。1965年生まれ。2004年にザッパラス代表取締役に就任、同社は05年に東証マザーズ上場、09年に東証一部の市場変更を行う。11年にenish代表取締役に就任、同社は12年に東証マザーズへ上場、13年に東証一部への市場変更を行う。投資先はウォンテッドリー、GLM、akippa、Emotion Intelligence、フーモアなど。

ほそたに・ともき◎ボーダー代表取締役社長。1980年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、日本総合研究所にて、官公庁系のコンサルティングに従事。気象衛星打ち上げ・運用プロジェクトなど、技術系プロジェクトのマネジメントを担当。2012年〜14年、UCLAにMBA留学。14年8月、海外出張の手配・管理を支援するボーダーを創業。

文=土橋克寿 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN CxOの研究」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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