ビジネス

2017.12.21

語るよりカタチにせよ、ツイッター創業者J・ドーシーの「巻き込み力」

ジャック・ドーシー(Photographs by Shunichi Oda)

ジャック・ドーシーはおよそ一般的なシリコンバレーのCEOのイメージとは大きく異なる。自社のビジョンやプロダクトの素晴らしさをピッチさながらに話すわけでもなければ、経営哲学について饒舌になるわけでもない。

しかし彼は、全世界3億2800万人ものユーザーを抱えるツイッターの共同創業者かつCEOであり、20%以上のペースで成長している世界最大級のモバイル決済サービス、スクエア(Square)のCEOも兼任する。多くのユーザーを熱中させる、彼の「人を巻き込む力」の源泉はどこにあるのか。

ドーシーは多くのIT経営者と同じように、エンジニアからキャリアをスタートさせている。かつては服飾デザイナーを目指したこともある彼は、リーダーシップを取って人を動かすというよりは黙々とプロダクトづくりに取り組むタイプだ。彼いわく、「目的を達成するためにCEOに就任したのであって、必ずしも起業家になりたかったわけではない」のだそうだ。
 
そんなドーシーは、鋭い洞察力を生かし、人々の「欲しい」を的確に形にしたサービスを世に送り出してきた。発想の原点は、「目の前の人の役にたつ」サービスを作ることだ。

例えば、自分のステータスを共有して人と繋がりたいという欲望を実現したのがツイッター。また、スマートフォンを使った急成長中の決済サービス、スクエアは、気軽にクレジット決済を行いたいという小規模小売店や個人の願いを叶えた。 

「説得」というプロセスはほとんどない

過去にドーシーは、自身の成功の秘訣を「自分が本当に欲しいもの」を追求することにあると語っている。

「ユーザーに受け入れられるかどうかは、やってみなければわからない。つまり、サービスつくりはある種の賭けなんだよ」

ある種直感的にサービスを生み出してきた彼は、どうやって自身のアイデアに人を巻き込んできたのか。重視しているのは、「とにかくカタチにすること」だ。

「僕はアイデアを理解してもらうために、“説得”というプロセスはほとんど用いない」とドーシー。「大事なのは、とにかくプロトタイプを見せること。実際にモノを見てもらうのが一番想像してもらいやすいから」

世の中に存在していないサービスの価値を、ロジックだけで説明するには限界がある。まだ形になっていないモノの価値観や意義を言葉巧みにあれこれアピールするのではなく、アイデアが湧いたらまず手を動かし、プロダクトを見せて納得させてしまう。エンジニア上がりのドーシーらしいやり方だ。

常に学び続けるマインドセットが大切

ドーシーは2008年に一度ツイッターのCEOを解任されるものの、翌年にスクエアを創業。2015年にはツイッターのCEOにも返り咲き、今は兼任で両社を統括する立場だ。そもそもリーダー気質でなかったというドーシーは、どのようにしてリーダーシップを身につけたのだろうか。

「大切にしているのはフィードバックをたくさん受けて、そこから学ぶこと」とドーシー。その姿勢に多大な影響を与えているのが、スクエアを立ち上げた頃に出会ったグロース・マインドセットという思考術だ。読書家としても知られるドーシーは、キャロル・S・ドゥエック博士がマインドセットに関する研究をまとめたベストセラー『Mindset』に影響を受けている。

ドーシーはこの本を「僕に継続して学ぶことの大切さを教えてくれた」と紹介する。「人生の最初のプロセスというのは学ぶこと。でも、学校を卒業してしまうと、大抵はそこで学びをやめてしまう。だからこそ広い視野を持って常に学び、成長する姿勢は大切なんだ」
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文=フォーブス ジャパン編集部 写真=小田駿一

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