ビジネス

2017.12.09

誰かに見られている? SNS広告の「公開実験」をやってみた

AlesiaKan / Shutterstock.com


奥本:千賀さんは、2年くらい前にフェイスブックとかで自分の個人情報をかなりオープンにして「自分の好みの広告はクリック、嫌なものは消す」、そういう実験を始めたんだよね。

渡辺:そうそう。スマホの位置情報をいつでも開示状態にして、クッキーもOK、好きな広告をクリック、嫌いな広告もこまめに「Hide ad」というのをクリックするようにした。Hide adの後に、なぜその広告を見たくないのか、というのも3択で答えられるポップアップが出るんだけど、それもちゃんと選んでフィードバックして。デジタルマーケターの夢のようなユーザーになってみたわけ。名付けて「ビヘイビア公開人体実験」ですよ。

奥本:フェイスブックや(フェイスブックが運営する)インスタグラムの広告がどんどん良くなって、今では広告を見るのが楽しくなったと言っていたよね。

渡辺:そう。私の趣味にものすごく合ったものが出てくるようになった。趣味・嗜好系のものはフェイスブックとインスタグラムが最強だね。洋服、鞄、靴とか。レベルでいうと、最初の頃は「欲しいと人と話したもの」が出てくるようになって、次は「心の中で欲しいと思ったもの」が出るようになって、最後は「欲しいと思う前」に出てくるようになった、って感じ。

奥本:おお、進化している。

渡辺:そう。周りの人も言ってる。

奥本:フェイスブック以外ではそこまで進んでないと思うけど。

渡辺:オンライン広告はここ数年グーグルとフェイスブックの寡占が進んでて、アドテクベンチャーがあまり出てこなくなってきてるからね。

奥本:そういう意味ではフェイスブック並みにすごい広告を出せる可能性があるのはグーグルなはずなのに、グーグルは趣味嗜好まではとりきれてない感じ。

渡辺:フェイスブックがすごいのは、友達のネットワーク全体を抑えているので「友達が好きなもの」まで反映されていることかな。笑っちゃったことがあって、私がオンラインでキャットタワーの話を延々読んでいたら、翌朝友達がツイッターで「どうして猫を飼っていない私のフェイスブック広告にキャットタワーが出るの!?」と言ってた。

奥本:それはグーグルにはできないね。

渡辺:グーグルもわかっててGoogle+とか頑張ったわけだけど、やっぱり今のところソーシャルはフェイスブックの独壇場なわけで。

奥本:最近、例えば新しいタイプの靴とか洋服とか鞄を売るのに、最初のマーケティングメディアはフェイスブックとインスタグラムというのが定番だし。やっぱり、フェイスブックだと友達関係や社会的属性がわかるから、潜在的なユーザーにもターゲティングしやすいよね。

渡辺:さっきの話に戻って「ビヘイビア公開人体実験」なんだけど、アマゾンでも、フェイスブックと繋いだりレストランデリバリーなんかの新サービスもいろいろ試していて。でも、アマゾンの広告は大して進化しない。日常品からルームランナー(笑)まで相当アマゾンで買い物をしてるのにちょっと不思議。人体実験の体感ではグーグルレベルって感じかな。

奥本:グーグルが「知りたいことがわかってから検索するところ」なのと同じで、アマゾンも「買いたいものが決まってから行くところ」なわけだから、結果が似てきてしまうのは仕方ないんじゃないかな。

渡辺:趣味嗜好といえば、IPO申請してたStitch Fixはどうなったんだっけ? 購読すると、その人の好みにパーソナライズした洋服やアクセサリが箱詰めで届くっていうあれ。去年一度試してイマイチだったのでそれっきりなんだけど。

奥本:11月に上場したよ。直近年度の売上げが10億ドル弱(約1000億円)だって。この手のサブスクリプション・コマースのベンチャーは、数年前はすごい人気で、ベンチャーキャピタルの資金も相当集まってたけど、ここ数年かなり苦戦してるところが増えてる。
次ページ > アルゴリズムの精度向上で、店舗に行かなくなる?

文=渡辺千賀、奥本直子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事