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シネマの女は最後に微笑む

『マダム・イン・ニューヨーク』主演のシュリデヴィ(中央、Photo by Jag Gundu/Getty Images)

かつてのタリバン支配下では女性の教育が制限されていたアフガニスタンで11月5日、初めて女性学を専攻した大学院生たち男性7人を含む22人に、学位が授与された。

家父長制が根強いこの国での女性の地位はまだ低いが、修了生の一人、サジア・セディキさんは、「私たちは自分たちが受けた高等教育によって社会を変え、人々、特に女性の役に立つことができる」と希望を語っている。

中近東から南アジアにかけての国々では全体的に男性優位の伝統が長く続いており、ジェンダー格差が大きい。インドもそうした国の一つだが、近年は女子教育に力を入れ、中等教育を受けるその数も増えつつあるという。そして、そうした変化は当然のことながら、地域や世代の違いによる「学べた女」と「学べなかった女」の差を浮かび上がらせることにもなる。

今回紹介するのは、「学べなかった女」である専業主婦が一念発起して英会話習得に奮闘する、2012年のインド映画『マダム・イン・ニューヨーク』(ガウリ・シンデー監督)。新人女性監督の初長編コメディとして異例の大ヒットを記録し、ヒロインのシャシを演じたインドの伝説的女優シュリデヴィは、15年ぶりのスクリーン復帰で話題を呼んだ。

妻や母という役割でしか家族に認められなかった一人の女性が、コンプレックスを克服し、自尊心と自信を回復させていくこのドラマの核となるのは、言うまでもなく「学び」だ。

ビジネスマンの夫と2人の子ども、義母と暮らすシャシは料理が得意、ことにラドゥというお菓子が近所に評判で、ささやかな副業となっている。コンプレックスは英語。おかしな発音を家族に笑われ、長女サシャの三者面談で学校に行けば、先生や他の母親と英語の会話ができず、サシャにバカにされてしまう。

絵に描いたように幸せそうな家庭の優雅なマダムの抱える、夫や娘への引け目、自分なりの頑張りを家族が認めてくれないことへの寂しさが、シュリデヴィの繊細な演技を通して伝わってくる。

ある日、ニューヨーク在住の姉から、上の娘の結婚式の手伝いに来てくれるよう頼まれたシャシは、仕事に忙しい夫や子どもたちより数週間先に一人で渡米するはめに。飛行機の中、英語が苦手なために不安だらけで挙動不審になっている彼女を、ユーモアをもって助けた隣の紳士の「迷わずに、自信をもって、決然と!」という別れ際のアドバイスが印象的だ。

姉の家に滞在し、ニューヨーク生活を始めたシャシ。何もかもが初めてでとまどうばかりのある日、大学生である下の姪ラーダとの待ち合わせ中、お腹が空いて入ってみたテイクアウトのカフェで、オーダーに手間取り店員を苛立たせてしまい、パニック状態で店から逃げ出す。

言葉がわからないとはこんなに惨めなものなのか‥‥と思い知った彼女は、「4週間で英語が話せる」との広告に引かれて英会話教室に電話、何とか申し込みに成功。こうして姉家族の目を盗み、自分の家族にも内緒の、英会話教室通いが始まった。

ラドゥ販売で貯めた自分のお金で授業料を払っているのに、なぜコソコソするのか? 専業主婦である己の「学び」への欲求は、おそらく誰も理解してくれないだろうと思っているからだ。

文=大野左紀子

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