「夫婦同姓は違憲」と訴訟する上場社長と、姓を作った私の話

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ここ最近、サイボウズの青野慶久社長が、国を相手に計220万円の損害賠償を求め、来春にも東京地裁に提訴する方針を固めた、という報道がありました。「日本人同士の結婚で夫婦が同姓か別姓かを選択できないのは「法の下の平等」を定めた憲法に反する」というのが訴訟の内容だそうです。

青野さんは2001年に結婚した時、奥様から「姓を変えたくない」と言われ、深く考えずに自分が奥様の姓になり、仕事では旧姓である青野姓で仕事をしています。それから今に至るまで、公文書は西端、仕事上は青野という使い分けをしなければならず、夫婦同姓制度によるあらゆる不便に悩まされているそうです。

男性で、しかも今を時めく上場企業の社長ですから、青野さんは目立っていますが、働く女性には決して珍しい悩みではありません。

実は私、今年の1月に離婚をしたのですが「名前」の持ち方にとても悩むという経験をしました。憲法に反するかどうか、という点はさておき、仕事をするにあたって名前はとても重要であると同時に、その名前を人生の選択によって変えなければいけない可能性があるというのはすごく大変だなとつくづく実感しました。

先ほど「働き方」は「生き方」でもある、と書きましたが、お互いの働き方を突き詰めていった結果、私たち夫婦の選択は離婚してそれぞれの道を行く、というものでした。「藤本」はパートナーの姓で、結婚した10年前はなんの迷いもなく旧姓からこちらに入籍したのですが、離婚の際に、旧姓に戻すかどうかという選択を迫られました。10年間仕事をして「藤本」という社会人としてのブランドができた結果、納得のある選択をしても難しい現実が待っているのだな……という体験をしました。

悩んだ末、私は「藤本」という名前の「新しい戸籍」を作りました。「元の戸籍に戻る」という選択以外に、「新しい戸籍を作る」という選択肢があったのです。

前述の通り、この10年間はすでに今の藤本での名前で仕事をしていて、私としてももう体の一部になっていますし、変えてまた一つずつ説明するのが大変……というのが理由です。戸籍や名前って、社会において重要な意味を持つ割に選択肢は少ないというのが現状ではないでしょうか。

人生100年時代、リンダ・グラットンさんは著書の中で、「価値観は変わるものだから、結婚のあり方も変わる」と書いていました。結婚だけではなく、仕事の価値観や優先順位も変わるでしょう。それと共に社会のあり方や社会自体の価値観も、変わってくるのではないでしょうか。

文=藤本あゆみ

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