「破壊」が必ずしも最高の戦略ではない理由

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「なんでもかんでも破壊しよう」という風潮に、私は飽き飽きしている。ここで他者に先んじて異議を唱えたい。破壊が常に最善の戦略であるとは限らないのだ。

この考えが私の中で確実になったのは先日、データ分析関連のソフトウエアを利用していた人たちと話していたときだ。彼らの経験は次のようなものだった。

最初に、オラクルやイングレス(Ingress)のような旧式のデータベースを利用していた。そこに、こうした旧製品を一掃すべく開発された新商品を携えた人たちが現れた。しかし、この新商品は完璧には程遠いことが判明。そこで第3段階として、旧式ソフトの代替としてではなく、旧式と組み合わせて使う新製品が登場した。新製品のさらに良い点は、旧製品のインターフェースを担うことにより、旧製品の仕組みを完全に把握する必要をなくしたことだった。

ここで、米配車サービス大手のウーバーを考えてみてほしい。同社は、最大限「破壊的」になることを目指し、できるだけ多くの都市で規制当局に盾突くことを美徳としていた。しかしロンドンでは最終的に、他の民間配車タクシー業者と全く同じように、民間配車サービス業者として営業免許を取る結果となった。最近の統計によると、ロンドン市内の同業運転手約12万人のうち、4万人がウーバーの運転手だ。たった数年間で目を見張る市場シェアを獲得した形だ。

そして同社は今年9月、それを台無しにした。「企業責任の欠如」を理由に、営業免許が取り消されたのだ。なんともばかげたことをしたものだ。既存の体制との協働関係を築き、市場の3分の1を獲得したのに、破壊をやめられないからという理由でそれを捨ててしまうとは。

現在行われている「破壊」は、3幕構成の“芝居”のうちの第2幕でしかないことを認識すべきだ。その3幕とは次のようなものだ。

第1幕:旧態依然とした状況がある。そこそこうまくいってはいるが、若干の制約もある。人々の一部は現状に不満を持つものの、変化を起こす力はないと感じ、諦めている。

第2幕:破壊者が現れる。すると、多くの人が現状に不満を抱いていることが分かる一方で、タクシー規制当局や旧式ソフト開発企業など、現状をいたく気に入り、それを守るために闘い抜く気でいる人々もいることが分かる。こうして闘いが始まる。

第3幕:解決。新旧が和解し、両方の最高の特徴を合わせた未来を作ることに合意する。

(参考:ヘーゲルの弁証法)

これは歴史理論として見ることができるが、ベンチャー投資の指針にもなり得る。破壊者に資金を提供してはいけない。破壊者は旧態に負けてしまうことがあまりにも多いからだ。投資すべきなのは、新旧の間で実現可能な協力体制を作るというビジョンを持った人々だ。

編集=遠藤宗生

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