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だが、ディーゼル・エンジンの開発に多額の投資を行ってきたドイツの自動車メーカーは、明らかにEVやハイブリッドカーの開発が遅れている。現在、ドイツのメーカーは約500車種の車を売っているが、EVはまだ30車種にすぎない。

さらに深刻なのは、EVのための充電インフラ不足だ。メルケル政権は20年までにEVを100万台にすることをめざしているが、現在、使われているEVは3万台に満たない。その最大の理由は、EVのための充電スタンドが不足していること、大半のスタンドでは充電に時間がかかりすぎることだ。一方、電力会社もEVの台数が少ないため、充電スタンドを新設・運営する事業の収益性が確保できない。


ドイツのEV充電スタンド

ドイツの市町村は、現在はディーゼル・エンジンを使っている路線バスを電気バスに切り替えることを希望しているが、この国には直ちに実用化できる電気バスはない。ことほど左様に、ユーザーの希望を満たせるEVが不足しているのだ。

車のエネルギー転換は、雇用にも影響を与える。EVの製造に必要な工員の数は、内燃機関の車に比べて少なくて済む。ディーゼル・エンジンに精通した機械工よりも、蓄電池に関するエンジニアや電気技術者が求められる。特に内燃機関の部品に特化した下請け企業にとっては、厳しい時代がやって来るだろう。自動車業界と連邦政府にとっては、EVシフトが雇用に与える悪影響を最小限に抑えるための努力を始めなくてはならない。

さらにドイツの自動車業界はEVシフトを断行し、排ガス不正という過去の負の遺産と対決しながら、「コネクテッド・カー」に象徴される車のデジタル化や、ビッグデータの活用、自動運転車の開発も進めなくてはならない。

もしもドイツの自動車業界がEVやデジタル化をめぐる競争で、日本やアメリカ、中国に後れを取った場合、この国のトップ産業が衰退する可能性もある。自動車帝国ドイツの繁栄が、曲がり角にさしかかっている。自動車産業が経済の中で重要な地位を占める日本にとっても、ドイツの今後の動きには注目する必要がありそうだ。


熊谷徹◎ドイツ在住ジャーナリスト。早稲田大学卒業後、NHKに入局。1990年からフリージャーナリストとして活躍。『偽りの帝国緊急報告・フォルクスワーゲン排ガス不正の闇』(文藝春秋刊)など著書多数。Forbes JAPAN 2017年9月号では「ドイツ・インダストリー4.0最前線」に関するルポを寄稿。

文=熊谷 徹

 

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