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だが、この措置によってディーゼル車の乗り入れ禁止を回避できるかは未知数である。ドイツ連邦環境省のバルバラ・ヘンドリクス大臣は、「8月2日に自動車業界が約束した措置は、NOx濃度を6%しか減らさない。これらの措置は、大半の町でEUの上限値を満たすには不十分だ」と述べ、触媒装置の更新などハードウェアの改修が必要だと考えている。その場合、メーカーの負担は大幅に増え、業績が悪化しかねない。

2番目の試練は、15年にVWグループで発覚したディーゼル車をめぐる排ガス不正事件の拡大だ。同社が不正ソフトで検査場でのNOx排出量を低く抑えていた車の数は、全世界で約1085万台に上る。アメリカとカナダの司法当局から課せられた和解金や制裁金の合計額は、約215億ドル(約2兆3650億円)に達する。アメリカではVWの社員・元社員7人が起訴され、2人が逮捕されている。

ドイツでも刑事捜査・民事訴訟が継続中だ。検察当局は、マルティン・ヴィンターコルン前CEOらに対して詐欺などの疑いで捜査を行っている。今年9月末には、VWグループのエンジン開発部門の最高責任者の1人、ヴォルフガング・ハッツ元取締役がミュンヘン地方検察庁によって詐欺などの疑いで逮捕されている。「末端の技術者による不正」というVW社の当初の弁解が覆されつつある。


VWのマルティン・ヴィンターコルン前CEO(左)とマティアス・ミュラー現CEO(右)

さらに、VWは株主からも槍玉に上げられている。2年前に排ガス不正が発覚した直後、同社の株価は一時43%も下落し、約250億ユーロ(3兆3250億円)の株式価値が吹き飛んだ。日米欧の機関投資家、個人投資家らは「同社が排ガス不正についての事実の公表を遅らせたために、経済的な損害を受けた」として、同社を相手取り損害賠償を求める裁判を起こしている。原告の数は1955社に上り、賠償請求額の合計は少なくとも19億ユーロ(約2530億円)に達すると推定されている。 

また、排ガス不正疑惑はダイムラーにも飛び火し、ドイツの検察庁が詐欺の疑いで捜査を行っている。その背景には、VWの不正が発覚した直後にドイツ連邦自動車庁(KBA)が調査を行ったところ、VW以外のメーカーでも、路上でのNOx排出量が、検査場での値を大きく上回ったという事実がある。これらのメーカーでは、気温が一定の水準にならないとNOx削減装置がフルに機能しないようにする「熱ウインドウ」という工作が行われていた。

ディーゼル車に背を向ける消費者

第3の試練は、今年7月にドイツ誌「シュピーゲル」がスクープした“規格カルテル疑惑”だ。同誌は、「VW、ダイムラー、BMW、ポルシェ、アウディが20年以上にわたってカルテルを形成し、自動車部品などの技術的なディテールについて談合していた」と報じた。

5社は1990年代から約200人のエンジニアらを約60の作業部会に参加させて、ディーゼルやガソリン・エンジンに関する技術、バイオ燃料などについて協議させ、製品に実用化される技術が横並びになるように、すり合わせを行っていたというのだ。議題の中には、NOx排出量を減らす尿素水を入れるタンクの大きさも含まれていた。シュピーゲルは、「各社はコストやスペースを節約するために、尿素水タンクの容量を8リットルという比較的小さいものにした」と主張する。

この容量では、アメリカの厳しい排ガス基準をクリアすることは難しい。つまり尿素水タンクに関する談合が、VW排ガス不正の原因の1つとなった可能性もある。EUの反カルテル当局は、すでにこの疑惑について調査を行っている。万一、EUがこの談合を違法と断定した場合、年間売上高の最高10%の罰金を科すことができる。つまり、カルテル疑惑はメーカーに大きな経済的負担を強いるのだ。

文=熊谷 徹

 

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