顧客との交渉 避けるべき5つの「罠」

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新規、既存を問わず、顧客との交渉は、極めるのが難しいスキルだ。一般的に使われがちな戦略はあるが、その多くは「交渉ではアグレッシブな姿勢を取るべき」という考えに基づいており、理想的とは言えない。

こうした戦略は特定の環境ではうまくいくかもしれないが、顧客との関係性を台無しにする危険性もある。

私は、ビジネスコーチや代筆サービス提供企業の創業者として、多くの時間を顧客と過ごし、中間的アプローチを模索してきた。

交渉術を極めるには年月がかかるが、重要な最初のステップは、関係性を損ねることなく攻めの姿勢を取る方法を学ぶことにある。私が気づいた「交渉で避けるべき5つの罠」は次の通り。

1. 優先順位が付けられていない

全ての譲歩が等しいわけではない。交渉時には、どの点なら、またどんな条件の下なら快く妥協できるかを自分の中で明確にしておかなくてはならない。

心理学者で作家のアダム・グラントは、「順序付け」と呼ばれる戦略も推奨している。自分の優先順位を相手に明かしてしまうというものだ。相手も同じく優先順位を明かしてくれれば、互いの妥協点につなげることができる。

2. 間違った「いかり」を選ぶ

スタンフォード大学経営大学院では「アンカー(いかり)」というものを、交渉時の基準値(つまり、交渉価格の最高値と最低値)として定義している。最高値と最低値それぞれにおいて、自分が受け入れられる値段を決めることは「ドロップ・アン・アンカー(いかりを降ろす)」と呼ばれている。

自分が設定した最低値よりも少し低い価格を提示されたら、単に値段が低すぎるとのみ伝えて、相手が提示できる最高額を示すよう求める。最高値、最低値を決めた上で交渉にのぞめば、交渉時に起こりがちな感情的な対応を避けることができる。設定した範囲内に収めることができなさそうであれば、交渉の場を離れよう。

3. 相手に先に提案させる

現代社会ではいつからか、交渉時に先手を打つと立場が弱くなるという考えが主流になった。攻めの姿勢より守りの姿勢の方が得策だ、という考えだ。

しかし、これは誤った考えだ。より高く先に提案すれば、最終妥協値も通常より高くなる。初めの設定値を自分でセットすることで、より高値での交渉をすることができる。

ただし、就職活動にこれは当てはまらない。就職活動では、先に数字を出した方が負ける。しかし、事業主としての交渉において、この方法は確かに有効だ。
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編集=遠藤宗生

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