ビジネス

2017.12.14

インド・新IT都市と日本企業 「フィンテック連携」の舞台裏

Victor Lauer / Shutterstock.com


国や業種、年齢など、垣根を越えてつながることは、発展やイノベーションのために大切なことだ。しかし、その実践は容易ではない。では、AP州とFINOLABの例について、両者はどうつながったのか? 具体的に紹介してみよう。

今年1月、インドでのスタートアップイベントに参加した筆者は、ニューデリーで4年ぶりにインフォブリッジの繁田奈歩社長と会った。そこでAP州の構想を聞き、印象付けられて帰国した。繁田氏は、筆者がかつて応援していたベンチャー企業インフォプラント(後にヤフー!に買収され、マクロミルと統合)の初期メンバーで、18年来の知り合いだ。インフォプラントの中国子会社社長を経て独立し、2006年から現職。インドをベースに、日本企業とインドをつなぐ活躍しているキーパーソンである。

その後、繁田氏の来日に合わせて、AP州のパートナー候補となりうるFINOLABを紹介。その出会いを機に斎木氏がインドへ飛び、現地で影響を受け、二者間の連携が進んでいった。

本当の「ネットワーキング」

つまり大事なことは、ネットワークを活用し、キーパーソンと直接つながり、迅速かつ具体的なアクションを起こすことだ。もっとも、ネットワークについては何か案件が生じてから作っても間に合わないので、常日頃からよい縁をつくり育むことが不可欠。さらには、キーパーソンと同じ視点で話ができるよう、日頃から視野を広げておくことも大切といえる。

ちなみに、FINOLABでのイベントでは、フリースペースでブロックチェーン推進協会(BCCC)理事長の平野洋一郎氏とフィンテックトークが盛り上がり、そこに繁田氏率いるAP州チームがジョイン。新たなつながりが生まれると同時に、さらに話の花が咲いた次第だ。

これは、コワーキングスペースの活用という点でも分かりやすい例だろう。開かれた形でキーパーソンの出入りが増えれば、こうしたマッチングも自ずから生まれてくる。

最近ではあちこちのイベントで「ネットワーキング」と言われるが、有益なつながりを生んでいる場や集まりはそれほど多くない。懇親会でもいつもの顔と話してばかり、特に英語となると避ける傾向が強いというのが現状ではないだろうか。

先に紹介した繁田氏と筆者のつながりにおいては、FINOLAB訪問時には筆者が応援しているベンチャー企業を半ば強引に紹介したし、11月イベントの懇親会でも、そこで出会った起業家をインドによいのではと紹介した。

AP州は、インドの州で最も多くの人材を米国にH-1Bビザ(高度な専門知識を要する職業に就くためのビザ)で送っている。つまりエンジニア輩出で世界トップクラスなのだ。繁田氏が支援している日本のAIスタートアップがインドでエンジニアを得ようとした際には、AP州の2大学の3研究室と連携することで、低コストでやる気あるエンジニアを得られたという。

インドとつながった、彼ら、FINOLABコミュニティ、そしてAP州自身が、これからどうなるか楽しみなところだ。


J A ChowdarySpecial Chief Secretary & IT Advisor to the Chief Minister of Andhra Pradesh。インド工科大学(IIT)マドラス校卒。インド運輸情報通信省(MCIT)下部組織Software Technologies Parks of India(STPI)にて、HyderabadとChennaiの会長を務める。現在は、AP州首相特別顧問&ITアドバイザーとして、同州における投資の動員、ITエコシステムの構築、雇用機会創出、イノベーション&スタートアップ活動の促進に励んでいる。

文=本荘修二

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