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2017.12.08

トランプ大統領が利用する「コミュニケーション革命」の正体

(Photo by Isaac Brekken/Getty Images)


トランプが大統領にふさわしいか否か。それはわかりません。しかし、結果としては、「n対n」の時代に即した戦い方をして、勝利を収めたことは事実です。仮に10年前、今ほどICTが発達していなかった時代にトランプとヒラリーが対決していたとしたら……。結果はまったく違ったものになっていたことでしょう。

従来の世界では、産業は政治にドライブされて発展するものでした。ところが、この先の世界ではその役割は反転されると認識されるべきでしょう。すなわち、「産業が政治をドライブする」時代が来た、その転換点の象徴が、1年前のアメリカ大統領選挙だったのです。

トランプの支持率が低迷する現在、世界中の大手メディアはこぞって政策の不手際を分析する記事や放送を配信しています。中には的を射た指摘もあるでしょう。しかし、情報の受け取り手として注意したいのは、大統領選の開票が始まるまで、大手メディアの大多数は「ヒラリー有利」の報道姿勢に偏っていたことです。

トランプの過激さや政治に不慣れな側面ばかりを過大に強調して、レッテルを貼ろうとしてはいないか。既得権益が変化のタネを潰そうとしてはいないか──。現代の大衆たる我々はそれを見極める手段をすでに手にしています。

「トランプは世界をどう変えるか? 世界を良くするのか悪くするのか」

その議論は、ICTの観点から言えば、少々ピントが外れているかもしれません。時代の変化は、トランプ個人、政治家個人の資質に依存しません。世界はすでに大きく変化していたからこそ、米国ではトランプ大統領、英国ではブレグジットが選ばれたのです。既得権益は解体され、世の中には新たな権力が生まれつつあります。

変化には混乱や困難や不純物の混入は避けられません。大きな変化であればなおさらです。中には、ネット世界の無責任で乱雑な議論に嫌悪を抱く人もいるでしょう。しかし、これこそニューワールドオーダー、コミュニケーション革命です。かつてのエリート層から、コントロールされることのない新しい時代の幕開けを迎えて、むしろ古参に含まれるメディアがどう振る舞うのか、その舵取りにも注目しましょう。

願わくば、扇動的な「トランプ叩き」による批判のための批判ではなく、発展的な未来へ向けての上質な議論を提言する役割を担ってほしいものと思います。

文=齋藤ウィリアム浩幸

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