ヒーロー映画のオールスター化、人々はいま「連帯」を求めている?

映画「ジャスティス・リーグ」プレミア上映に登場したバッドマン役のベン・アフレック(Photo by Gregg DeGuire/WireImage)


「ジャスティス・リーグ」は、最強のヒーローであるスーパーマン亡きあと、バットマンである大富豪のブルース・ウェインが、新たな世界の危機に対してチームを組んで戦うため、ワンダーウーマンの助けも借りて、ヒーローたちをリクルートしていくというのが、前半のメインストーリーだ。

作品はこの部分に注力したためか、後半の新たな敵との戦いが物足りなく、興行成績的にはいまいち思わしくないらしい。日本での第1週土日2日間の興行成績は、動員13万3500人、興収2億400万円で、少し前に公開された「ワンダーウーマン」の興収比76.5%だそうだ。作品の終盤ではちょっとしたサプライズもあり(予想されていたものではあるが)、次回作以降の展開に期待がかかる。

ところで、ヒーローたちを集めてオールスターチームをつくるという発想は、コミックではすでに前世紀の中頃から試みられていたことなのだが、大衆動員を目指すメジャーな映像作品として製作され出したのは、ここ10年のことだ。前述のように、21世紀に入り、アメコミのヒーローたちが悩み始め、自らの存在にも疑問を持ち始めていたのであるが、今度はその反動なのか、連帯を求めてチームを結成する。

コミックヒーローたちのオールスター作品が製作されるのは、映画会社の商業的な思惑と言ってしまえばそれまでなのだが、911の同時多発テロで幕を開けた21世紀、ますます世界は複雑化して、さまざまな価値観が揺らぎ始めている現実にあって、ヒーローたちも連帯することで、自らの使命である「正義」のための戦いをあらためて確認しようとしているのではないだろうか。

アメリカは昨年の大統領選以来、アンチヒーローとも言えるトランプ大統領の登場で、国内が分断の危機に瀕している。その中でアメリカン・コミックヒーローたちの連帯は、少なくとも人々にとっては心強いものとして映っているのではないか、とうがった見方もしてしまうのである。

ということで、そろそろ我が国でも、ウルトラマンと仮面ライダーとドラえもんが共演する映画が企画されてもいい頃なのではないだろうか。

年間約500本の映画を鑑賞する編集者による「シネマ未来鏡」
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文=稲垣伸寿

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