世界でもっともピーティーなウイスキーの進化形

アードベッグ アン・オー

モルトウイスキーファンがいつかは訪れたいと願う場所、それはスコットランドのアイラ島である。

東京23区ほどのサイズの島に人口はわずか3400人程度。メキシコから流れこむ潮のためスコットランドよりは温暖だが、荒天で知られるスコットランドらしく風が非常に強い。天気がコロコロと変わり、船の運航がアテにならないこの島の主産業はウイスキーの製造。1800年代から大小の蒸留所でウイスキーが造られてきた。

アイラ島産のウイスキーは一言で表すなら「スモーキー」。「ヨードチンキのような」「クスリっぽい(medicinal)」など、さまざまに表現されるこの特色は、ピートとよばれる泥炭からもたらされるもの。泥炭とは湿原にたまった木や草花による堆積物であり、このピートを焚いた煙でウイスキーの大麦を乾燥させる際に、その煙の香りが大麦に付着するというわけだ。アイラ島の沿岸地帯ではピートに海藻が含まれるため、ウイスキーに磯の香りがする独特の風味を与えている。

現在ある8カ所の蒸留所のウイスキーのなかで、「もっともピーティー(ピートによる香りがスモーキーで芳しい)」と評されているのが、アードベッグ。1815年にアイラ島で生まれ、クセになる個性的な味わいから、“アードベギャン”と称する熱狂的なファンに愛されるカルト的な存在である。

そのアードベッグに約10年ぶりに定番アイテムとして加わった新商品が「An Oa(アン・オー)」。アイラ島の最南端に位置するマル・オブ・オー(オー岬)にちなんで名付けられた「An Oa」は、アードベッグ特有のスモーキーな香りに、繊細な甘さがなめらかな、まろやかさを感じさせるシングルモルト。

その製法は、原酒に甘さをもたらすペドロヒメネス(シェリー)樽、スパイシーさをもたらすチャーをほどこした(内面を焼いた)新樽、アードベッグらしさをもたらすバーボン樽の3種類の樽で熟成させ、今回新たに造られた専用の部屋でヴァッティング(複数のカスクを桶に入れて混和)することによって、それぞれの個性が複雑なハーモニーを奏でる稀有なシングルモルトへと昇華させるのだという。

スモーキーさとまろやかさがひとつの調和を成す「アードベッグ アン・オー」は紳士のセルフトリートにふさわしい、ぜいたくな時間をもたらしてくれる。

今夜はオーセンティックな銀座のバーでまずは一杯、ストレートではじめてはいかがだろう。

Ardbeg An Oa
度数:Alc.46.6%
容量:700ml
価格:7000円(希望小売価格)
問い合わせ:MHD モエ ヘネシー ディアジオ 03-5217-9731

<今宵の一杯はここで…>
Coffee Bar K 〜圧巻のバックバーが待つ銀座の止まり木〜

英国のパブを思わせるような重厚なインテリアに、大きなカウンター。黒革のイスに身を預け、美しくみがかれたカウンターを前にすると、“銀座のバー”で飲んでいるんだなあと実感がこみ上げてくる。圧巻のバックバーには1000本ものボトルが鎮座。夕方5時から朝5時までオープンしているため、時間によって客層が異なり、中には軽く食事をしながら飲む人も。どんな客でも寛容に受け容れてくれる、銀座のオーセンティック・バーである。


左:「やわらかいんですが余韻はしっかりと長い。クリーミーで、糖蜜のような甘みも感じます」と語る佐藤真マネージャー。右:「オードブルの盛り合わせ」。シェフが常駐する同店の名物はカツサンド。



東京都中央区銀座6-4-12 KNビル3F
Tel.03-5568-1999
営業時間/17:00〜朝5:00 
定休/日曜・祝日

photograph by Kenta Yoshizawa text and edit by Miyako Akiyama

この記事は 「Forbes JAPAN CxOの研究」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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