社員が安心できる居場所をつくる|家入流ゆるふわ経営論 第1回

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誤解を恐れずに言うと、僕は会社という組織は社員のためにあると思っています。経営者の役割は、そこで働く人たちが「この会社で働いていてよかった」と思えるような居場所をつくること。

僕はこれまでずっとITという歴史の浅い、若者を多く抱える業界で仕事をしてきましたが、インターネット元年と呼ばれる1995年から20年以上も過ぎれば、無秩序で自由だった世界にも、社会と呼ぶべき輪郭が生まれます。携わる人たちの年齢も次第に上がり、その背後には様々な生活があります。結婚して子どもが生まれる人や、親の介護に直面する人、事故に遭う人、心を病んでしまう人……。

一人ひとりが困難にぶつかったときに、会社は彼らを守るセーフティネットでありたいと思うんです。それが居場所の定義だと思うし、安心できる場があれば、良いサービスを作ることにも集中できる。結果、ユーザーにも株主にも喜んでもらえます。

こうしたセーフティネットの発想は、「社会包摂(社会的包摂)」という言葉に紐付いています。「包摂」とは、文字通り“一定の範囲に包み込む”という意味があり、経済や社会に対して用いたのはマルクスが最初とされています。

生きづらさや問題を抱えている人を排除せず、社会のひとりとして取り込み支え合うのが「社会包摂」の考え方です。障害を抱える人、貧困で困っている人、LGBTの方々、いろんな立場の人が抱える問題を、国や市などの公共団体だけに頼らず、街のコミュニティや繋がりの中で解決していこうという姿勢です。

高学歴のエリートになって、会社で高給を稼ぐ。それこそが強さである、というのが戦後の高度成長期の日本でしたが、改めてそれが幸せだろうかと問われています。

よく引用されている幸福度と年収の関係に関するプリンストン大学の調査では、ある程度の年収からは、幸福度はあまり変わらないといいます。2010年時点の調査では日本円でおよそ600万円。現在に置き換えると800万程度でしょうか。それ以上稼ごうとすると、その生活を維持するためのコストも時間もかかり、幸福度はむしろ下がっていくというのです。

かつては上昇し、拡大していくことこそ幸福への道だというのが信じられていたわけですが、意外とそうでもなかった。それよりも社会の中で孤独にならず、誰かと繋がり、自分の居場所が持てることが、どれだけ幸せか。

今、僕が代表を務めるCAMPFIREという会社の基軸は、この「社会包摂」にあります。そして、それをサービス面で実現しようという考え方が「金融包摂」です。声を上げたくても上げられない人や、生活したくでもできない人、学びたくても学校に行けない人がいる。ひとりでも多くの人に、1円でも多くお金がまわる世界をつくりたい。

僕たちはクラウドファンディングという仕組みを使って、「金融包摂」を民間から実現したいと考えています。そのためには、会社で働く仲間たちも同様に包摂されないといけない。そういう組織にしていかなければなりません。

次回からは事例なども交えながら、僕が考える「働き方」についてお話していけたらと思っています。

文=家入一真

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