キャリア・教育

2017.11.30 12:00

ウーバーにつきまとうカラニックの「亡霊」 急務のブランド変革

トラビス・カラニック前最高経営責任者(Photo by Michel Porro/Getty Images)

トラビス・カラニック前最高経営責任者(Photo by Michel Porro/Getty Images)

米配車大手ウーバーは問題続きだ。セクシュアルハラスメント横行問題から米グーグルとの知的財産を巡る裁判まで、評価額480億ドル(約5兆3500億円)のスタートアップである同社は、真に大切なたった一つの価値を急速に失っている。それは「信頼」だ。

いやむしろ、すでにウーバーの信頼は完全に失われた。というのも、ウーバーが2016年にユーザー5700万人と運転手700万人の個人情報を漏えいさせていたものの、その事実を公表しなかったことが判明したのみならず、そのもみ消しのためハッカーに金銭を支払っていたとの疑惑まで浮上したのだ。

2019年に新規株式公開(IPO)を控えた同社だが、沈みゆく船への投資は気が進むものではない。ウーバーの評価額は今年、リーダーシップを巡る懸念のため既に15%下がっている。

リーダーシップに必要なものは、突き詰めれば信念だ。つまり、そのリーダーに付いていきたいと思う信頼を集められるアイデンティティーを持つかどうかということになる。ウーバーの課題はただのリーダーシップの問題ではなく、アイデンティティーの問題なのだ。世界最大のスタートアップである同社は、どのような存在になりたいのか、成長後どうしたいのかが不明瞭なままだ。

ウーバーは、自社をいまだにスタートアップと認識しているため、5歳児のように振る舞い続けている。かつて同社のアイデンティティーを作り上げたトラビス・カラニック前最高経営責任者(CEO)は、目的のためには手段を選ばないという不快な方針を採用していた。同社の問題は、このカラニック流の考え方はもはや捨てるべきなのに、これに基づいたまま解決策を模索していることにある。

世間の中で一つのアイデンティティーしか知られておらず、正しい信念や行動がまだ共有されていない状況では、アイデンティティーの再定義は難しい。

例えば「ウーバー」という言葉を誰かの前で口にして、相手の反応に注目してみよう。社名を聞いたとき、どのような考えが頭に浮かぶかを尋ねる。(時事問題に精通しているのが前提だ)

最初に浮かぶことの一つは、創業者自身が、自分の作った会社から追い出されたという事実だ。つまり、カラニックが会社を去っても、彼の亡霊は残り、ウーバーのブランドに多大な影響を与えている。

ウーバーの現在のアイデンティティーは、良い印象より悪い印象を与えることが多い。根本的な刷新が必要だが、ダラ・コスロシャヒ新CEOが一人でこれを成し遂げることはできない。チームが必要だ。私だったらまず、次のような行動を取るだろう。
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編集=遠藤宗生

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