メルカリのHPを見ると、24人もの経営陣の名前がずらりと並ぶ。彼らは何を基準に登用されているのか。そんな疑問を抱いてしまうのは、創業からわずか4年で海外展開のみならず、多くの新規事業を圧倒的なスピードで世に提供し、単なるフリマアプリの会社ではない潜在能力を見せているからだ。
例えば、地域コミュニティアプリと言える「メルカリ アッテ」は、実際に近所の人同士が会って、モノの売買やサービス提供、趣味の仲間探しなどをする。また、ブランド品に特化し、AIが自動で査定をしてくれる「メルカリ メゾンズ」、あるいは岩手県に本拠を置き、産地の農産物を消費者に届ける「ポケットマルシェ」への出資、シェアサイクルサービス「メルチャリ」など、次々と新たな取り組みを発表している。
国内事業を統括している社長兼COOの小泉文明は外部人材の採用の際、「その人の意思決定の歴史を聞く」と言う。
「成功も失敗も含めて、どういう判断基準で意思決定をしたかで、その人のセンスが見えます。逆算して未来を想像していたのか、なんとなく判断しているのか。起業経験者にはレイオフという辛い時期を体験した者もいます。レイオフの際の意思決定の背景や、それを乗り越える経営者としての強さ、そこからどう軌道に乗せていくかを見るようにしています」
小泉自身、27歳でミクシィの取締役執行役員CFOを経験。「急激な成長で注目を浴びるなか、社長を含めて3人しかいない取締役として舵取りを任されるのはプレッシャーであり、貴重な経験でした」。
執行役員で子会社「ソウゾウ」社長の松本龍祐はカフェの経営で失敗しているが、こう話す。
「自分の身の丈では無理な規模の店舗を始めることになったのですが、SNSがない時代に、店舗の立ち上げに必要な人が口コミで集まってくれました。真っ先に旗を振ること、自分が率先してリスクを取るという起業家としての視点や、つくりたい世界観を考えた上で、周囲の人たちと協力しながら仕事を進めていくというプロデューサー的な現在の働き方の原型になっていると思います」。
松本はその後、 SNS事業で成功したものの、中国企業からの買収を突然撤回されて資金繰りを悪化させるなど、若くして起伏の多い人生経験を積んでいる。
同じく執行役員の掛川紗矢香はグリーに入社後、海外での子会社設立を行い、閉鎖するまでを経験した。掛川は「会社を大きくする過程でグループ間の意思疎通や共通認識を得る難しさを痛感しました」と言う。