EU離脱後のロンドン金融業、アムステルダムが誘致へ猛アピール

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金融パスポート

ブレグジットに続き、デジタル企業が英国外に移るかどうかは、英国のいわゆる「金融パスポート」の扱いにかかっている。これは、ロンドンのリスク志向の金融規則下で作られた融資や住宅ローン、投資手段をEU内でも販売可能にするもので、パスポートがブレグジット後も有効となれば、こうした金融商品の提供に必要なデジタル面の支援業務もロンドンに残ることができる。しかし無効となれば、EU事業の拠点をロンドンに置く多国籍企業や英企業は、少なくともデータ処理をEU内に移転しなければならない。

いわゆる「ハードブレグジット(強硬離脱)」が起きれば、金融パスポートはほぼ確実に更新されないだろうが、現時点では何が起きるか誰も分からない。「企業がハードウエアの移転を迫られれば、アムステルダムにチャンスが訪れるが、全てが確定するまで移転はない」とエイルツは指摘する。

人の移動は、そこまで複雑ではない。ネット環境が整った現代社会では、全従業員を移動させることなく事業を移転することが可能だ。アムステルダム市のウド・コック金融・経済担当副市長は「ロンドンを拠点とする国際的な銀行が、事業を全て他都市に移すことはない」と述べている。

高収入の野心的な金融トレーダーにとってアムステルダム移転の障害となり得る唯一の問題は、オランダにボーナスの上限額があることだ。「この現状はこれからも変わらないが、ボーナスがあまり重要でないフィンテック、財務、清算、事務管理部門、またソフトウエアなどクリエーティブ部門の仕事でさえも、アムステルダム移転が理想的だ」とコック。注目を独占する金融の花形職よりも、こうした裏方の仕事の方が多いことは明らかだ。

コックは「接続性の良さや巨大な人材プール、質の良い生活環境など、全ての要素を備えた場所はアムステルダムしかない」と語る。確かに、同市には3つの大学があり、志の高いスタートアップの気風もあって、アイデアを持つ若い人材があふれている。
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編集=遠藤宗生

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