EU離脱後のロンドン金融業、アムステルダムが誘致へ猛アピール

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英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が近づく中、フランクフルトやアムステルダム、パリなどの都市が、ロンドンの金融サービス大企業の移転先として、われ先にと名乗りを上げている。

アムステルダム市当局は、これまでに100社以上と連絡を取り、そのうちすでに18社の移転手配を進めていると明かした。同市の企業・自治体の指導者たちは、同市が元々技術的・物理的に有利な場所にあると語る。

ロンドンに本社を置くエクイニティ(Equiniti)に昨年買収された技術・サービス提供企業KYCネットのパトリック・ライアン元最高経営責任者(CEO)は、アムステルダムは「パリ、フランクフルト、ロンドンから列車や飛行機で1時間の距離だ」と語る。同社は買収後もEU事業の拠点をアムステルダムに据え置くことを決めた。ブレグジットが決まった英国民投票に先立つ2008年のことだ。

「ロンドンでは、空港に行くだけで2時間かかる」とライアン。常に世界の空港トップ10に入るアムステルダムのスキポール空港は、世界の各主要都市への航空便が毎日発着し、現代的かつ効率のよい鉄道網を利用すれば街中心部の駅へは15分以下の近さだ。

デジタルの中心

光ケーブルや衛星による通信網が整備されたアムステルダムは、デジタルの世界でも中心に位置し、ロンドンやフランクフルト、香港と並び、世界の主要なインターネットハブの一つとなっている。アムステルダムのサイエンスパークに2つのデータセンターを持つデータセンター運営企業、エクイニクス(Equinix)のマネージングディレクター、ミシル・エイルツは「欧州人口の8割は、アムステルダムからネットワークで50ミリ秒圏内にいる」と話す。

ブレグジット後、法律上でのEU国境は変化するが、アムステルダムのような拠点のデジタルインフラはさほど(少なくともすぐには)変わらないはずだ。「企業はブレグジットの全容が明確になり、次の動きが完全に分かるまでハードウエアを動かさない」とエイルツ。「海底ケーブルは設置までに3~5年かかり、コストも高いが、デジタル部門も最終的にはブレグジットに続くだろう」
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編集=遠藤宗生

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