カルチャーが違いすぎる
2016年にプログラムを始めるまでに一番大変だったのは、そもそも役所と民間というレベルの話ではなく、日本とシリコンバレーの仕事の進め方が全然違っていたことだ。神戸市職員として、現在も500 Startupsのサンフランシスコオフィスに派遣されている三嶋潤平さんはその違和感をこう語る。
「朝行くと自分以外誰もオフィスに出勤していない。昼食も一人でとる。夜に仕事を終える時間になっても誰も来ない。ただ、チームメンバーにメールを送ると即座に反応がある。一体どこで働いているのか……」
ここまで文化の異なる団体間の交渉は困難を極め、合意に至るのは難しい。神戸市と500 Startups側との協議は1〜2週間に一回、テレビ会議により行われた。
「持ち帰り考える」というリスク
日本では、地方公共団体に限らず民間の大企業など大組織でも、現場で交渉を担う部課長クラスは、与えられた権限に制約がある。現場で新しく出てきた重要事案にその場で即断できない。しかし、シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタルでは、マネージングチーム(経営層)は存在するが、投資判断や業務提携に至る権限がパートナーと呼ばれるメンバーに与えられている。
このような両者が話をすると、重要な局面に至ったとき、日本側は「その件は持ち帰って検討したい」という回答になり、協議は中断する。彼らに言わせれば「レベルはこだわらない。判断できる人間が会議に参加すべき」ということだが、現実には難しい。