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2017.12.04

シリコンバレー有力VCと日本の地方都市 異色なコラボの舞台裏

(左)500 Startups パートナーのザファー・ユニスさん、(右)神戸市 久元喜造市長


このジレンマを解決するために必要なのは、なにはともあれ新たな提案にその場で即断することだ。前に進めたい事案については、「私の考えとしてはYesだ」と伝える。そのうえで、神戸市において誰が承認権限を持っているか、その人物にいつまでに相談するかを明かし「了解が取れるように頑張る。最終回答はその後になるが、今は進める方向で考えよう」と前進させるのだ。ときには市長に相談すべき重大な局面もあったが、その際も同様に500 Startupsに説明した。

ときには絶対に対応できない提案をしてくることもあったが、こちらの内部プロセスを共有することで議論の幅を拡大させるメリットもあった。

日本人が使いがちな「持ち帰って検討したい」という発言は、交渉当事者として内部承認プロセスを進めたいという前向きな意味を込めていたとしても、フラットで即断する文化を持つ彼らからは後ろ向きに捉えられる。その瞬間、こちら側に熱意がないと判断され、それが大きなリスクとなる恐れがあることを、私たちは認識しておかなければならない。

500 Startupsのパートナーとして神戸市との交渉を担当したザファー・ユニスさんは「神戸市は職員間で合意を取るプロセスがオープンで、リスクをいとわない文化が育っている。起業家たちと一緒に仕事するなど新しいことしているから、そのような文化が育つのだ」と、のちに話していた。

起業家育成プログラムを2回行うなかで、神戸だけでなく日本全体で見たとしても、まだまだ黎明期といえる国内スタートアップ事情が改めて見えてきた。次回の記事では,「日本にはスタートアップがない?!」というテーマで掘り下げたい。

文=多名部 重則

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