日本と世界の「教育のこれから」


4. モニタリング機関の設立

轟氏の言葉を借りると、良質の幼児教育を決める3つの要素は「1. 先生の質、2. 環境の質、3. カリキュラムの質」である。3も1によってある程度規定されるとすると、残るのが2、つまり施設の環境である。Kagan教授が挙げてくれた3つの重点政策の最後も、「施設の評価制度(施設ごとのクオリティコントロールの仕組みづくり)」だった。

これは必ずしも政府が設立する機関でなくても良く、米国ではNAEYC(National Association of Education for Young Children)という機関が10の評価軸に基づいた多数のチェック項目を掲げて独自に施設評価を行なっている。この認定を受けた施設は各地で人気となっており、教員の給与や定着率も高いという。

慶應義塾大学の中室牧子准教授によれば、我が国でも、海外で開発された「保育環境評価スケール/ECERSあるいはITERS」を用いて東京都内の認可保育園で評価を実施したところ、計測結果と子どもの発育には強い相関関係が見られたという(中室准教授の分析:http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/17j001.html)。

ECERSあるいはITERSでは、トレーニングを受けた調査員による観察調査で約130程度の項目をチェックするとのこと。ただし、日本固有の保育文化や特殊事情などもあり、そのまま導入するには時期尚早なのではないかとの見方もあるようである。

政府は3〜5歳児向け幼児教育の無償化に加えて、待機児童解消のために32万人分の受け皿を用意するという。しかし、これまでにも筆者が何度も主張してきているように、既に生活保護家庭は無償化されており、住民税非課税家庭は自治体にもよるが最大で月額5000円の負担額に抑えられている保育料を無償化することは、純粋に自己負担額の多い富裕層を優遇するに過ぎないのではないだろうか。

都内の0〜2歳児に集中している待機児童の解消と、特に生活困難家庭の子どもたちの就園率向上に全力を注ぎつつ、それでもまだ財源に余裕がある場合には、今回見たように複数の、かつ相当額の予算を要する質向上のための政策が優先されるべきではないかというのが、国内外の幼児教育政策を学んでみての私見である。限りのある財源だけに、本当に次世代の子どもたちのために役に立つ政策に、費やしてもらいたいものだと切に願う。

次回からは、幼児教育を少し離れて、米国でも注目の集まる「能力をテスト以外で測る方法」について、実例を交えながら考察してみたい。

ISAK小林りん氏と考える 日本と世界の「教育のこれから」
連載記事一覧はこちら>>

文=小林りん

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい