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アマゾンは、数百年前から変わらず、そして今後の数百年でも変わらないだろう人間の基本的欲求に応えることで成り立っている。その欲求とは、欲しいものを好きな時に、できる限り簡単かつ安価に手に入れたい、という衝動だ。ベゾスはこのニーズを満たすべく、自らの創造力のすべてを注ぎこみ、テクノロジーを活用して、選択肢が豊富かつ、速くて安いオンラインショッピングを実現したのだ。

この観点から見ると、この10年間に登場し大きな成功を収めた新興企業のほとんどが(さらには、長く成功を続けている既存企業のすべてが)、人間の欲求にできる限り応えることをベースとしていることがわかる。そして、そうした企業の大半が、テクノロジーの進歩で可能となった新たなビジネス手法を活用してきた。

例えばグーグル。人間には、何かについて調べたいという欲求がある。グーグルは、20世紀の百科事典(もしくは大昔の物知りの長老)の21世紀版だ。

そして、フェイスブックやインスタグラム。人間には「つながっていたい」という欲求がある。両サービスは、昔の人々が利用していた街角広場や社交クラブ、裁縫の会の21世紀版なのだ。

書店チェーンなど、「アマゾンの出現により産業が破壊された」と非難する声もあるだろうが、歴史を振り返ると、これと同じことは、より良い形で人間の欲求に応えるものが新たに出現するたびに繰り返されてきた。

20世紀初頭には、自動車の大量生産が始まった約30年の間に、馬車職人、厩舎のオーナー、馬の飼育員、馬の取引業者、馬具販売業者など多くの人々が職を失った。米国経済の中心となっていたひとつの産業がそっくり置き換わったのだ。

「安全で安く、かつ早く移動したい」という人間の欲求を満たすための飽くなき探究は続いており、近い将来には自動運転車の普及により、長距離トラック運転手を含む多数の人々が職を失う状況が再び起きるだろう。

また、石炭産業をめぐる怒り、希望、ノスタルジーによって、石炭への依存度が今後高まることはない。できるだけ安く効率的にモノを作って動かしたい、という人間の欲求は、火から蒸気、石炭、そして今では天然ガス、風力、太陽光、原子力とエネルギー源を進化させてきた。私たちが自動車を捨てて馬や馬車へ戻ることがないように、石炭がエネルギー源として再び脚光を浴びることはないだろう。

私の説が正しいとすれば、人間の基本的欲求を満たす方法を追究することこそ、事業成功の秘訣(ひけつ)だ。つまり、経営者が自分のビジネスの将来像を描く際は、次の2項目を常に自問する必要がある。

(1)自分のビジネスは、人間の基本的欲求をひとつ以上満たしているか?
(2)テクノロジーの進歩や人々の期待の変化を踏まえつつ、その欲求を最も効果的かつ効率的に満たしているか?

変化の激しい時代においてビジネスの将来を計画する方法、それは上記の質問に対してはっきりと“Yes”と言えるような事業の将来像を描き、目標達成への道筋を立てることにある。

編集=遠藤宗生

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