マッキンゼー国際研究所が先日発表した報告書では、こうした「世界市民」の多さに焦点が当てられた。報告書によると、出身国外に住む2億4700万人のうち35%が、高等教育を受け、高度技能を持っている。さらにこうした移民は、移住先の国民よりもはるかに高い適性を備えていることが多い。
移民は高度技能だけでなく、新たなアイデアや視点をもたらしてイノベーションを発展させる。例えば、アラン・チューリング研究所のチームが今年発表した論文は、人・アイデアの継続的な流入が、大学での研究・イノベーションの成功に非常に重要だと論じている。
新しく多様な考え方にさらされると、イノベーションの成果は大きく向上する。米インディアナ大学の研究チームによる調査では、海外の研究者と広範囲にわたって協働した学術者の研究成果が他の研究で引用される確率は、国内のみで活動した学術者の研究よりも40%高いことが判明。この調査結果は米オハイオ州立大学などの研究者による調査でも裏付けられ、外向き志向の研究者が作成した論文の方が良質で革新的だとの結論が出ている。
グローバルな研究開発
ここまでを踏まえると、革新的企業がグローバルな研究開発(R&D)方針を採用しているのも驚きではないだろう。戦略コンサルティング企業ストラテジーアンドが実施した近年の複数の調査によると、企業はグローバル人材を取り込み、将来の目標市場に近いところでイノベーションを起こそうと、国外市場への研究開発費を増やしている。こうした方針はR&D分野に大規模な投資を行う企業のほぼ全てで採用されており、こうした企業は国内への投資が多い企業と比べ約30%高い利益を得ている。
企業の海外進出は数十年前から行われているが、イノベーションのグローバル化は近年、急速に加速している。貿易の本質がグローバルであることが理由の一部でもあるが、最大の要因はグローバル人材確保の欲求だろう。