ビジネス

2017.11.29

イノベーション創出を「財務で支える」3Mの仕組み

TY Lim / Shutterstock.com


──新製品・開発プロセスの見える化をしている。

6つのゲートで管理している。製品別の指標としては、付加価値を示す「利益率」を重視。既存製品よりも高い利益率を見積もれなければいけない。とはいえ、最初のアイデア段階では利益率は当然見えないので、ゲートによって見るべき項目を増やしていく。ゲートの最終段階では、事業部門の予算に組み込まれる。売り上げが計上された段階で利益率を見ていく。

──「ビジネスカウンセル」の役割も大きい。

ファイナンス部門には経理部・財務部の担う役割とは別に、事業部と一緒になって業績の最大化を考える「ビジネスカウンセル」の存在は重要だ。PL管理が基本となるため、目標である利益達成をどうするかについて、事業部門と議論し、長期計画を立て、予算組みをする。そして「予・予分析」と呼んでいる予算と予測の分析を行う。過去の結果との比較ではないため、予測値を見ながらリアルタイムで戦略を変えることもできる。

連続的にイノベーションを生み出し利益につなげていくには、ファイナンス部門のサポート体制が必要だ。私自身の経験則として、優れた経営者は「他人が見えないもの」や「自分だけの勝ち筋」が見えている。言語化できなければできないほど競合優位に立てる。ただ、明確な戦略に展開しにくい。そういう場面こそ、ファイナンス部門の力が活きる。

経営者と議論して感度を一緒にし、あやふやなものを把握、数字化して、経営者とともに組織全体を動かす。これからの時代を考えるとファイナンスの重要性はさらに高まるだろう。

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こん・まさひこ◎1959年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業、シカゴ大学経営大学院にてMBA取得、米国公認会計士。GE横河メディカルシステムCFO、ファーストリテイリング執行役員などを経て、06年スリーエム入社。13年より現職。

スリーエム ジャパン◎1902年米ミネソタ創業、「イノベーション」の代名詞ともされる世界有数のコングロマリット3Mの日本法人。基盤技術だったコーティングを元に自動車や電子、医療機向けの材料などを幅広く手がける。1961年に住友電気工業との合弁会社として発足、2014年に米3Mの完全子会社に。

インタビュー=日置圭介 構成=山本智之 写真=Kay N

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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