プルーでは、1〜2か月に一度、定期的にフードイベントを行なっている。「何か常に新しいことが起きている、という革新性が、今のリゾートには必要。こうしたポップアップもその一環です」とラークは語る。
宿泊客の多くは、リゾートから足を踏み出すことなく過ごす。そんな中で、食事は重要なエンターテインメントだ。そして、最高級リゾートには、必然的に最高級のエンターテインメントたる食事が必要となる。
「レストラン自体の収益は考えていません。ただ、トリサラに来る滞在客は通常3泊から10泊をここで過ごします。リゾートを選択する際に、食が重要な要素を占めることを考えると、私たちが選ばれるためにも、魅力的なレストランを持つことは大切なのです」
今年11月にも、アジアのベストレストランのメインスポンサーでもあるサンペリグリノ、またそのオンラインプラットフォーム、ファインダイニングラバーズ共催のイベントを行った。現在アジアのベストレストラン37位であり、プルー同様タイの食文化を表現しているレストラン、レドゥのティティド・タッサナカジョンシェフを招き、2日間に渡って特別なディナーを提供したのだ。
レドゥの料理
人気でなかなか予約が取れないレドゥとあり、中にはバンコク在住ながら「希望の日時でレドゥの予約が取れなかったから」と、わざわざ飛行機に乗ってこのポップアップにやって来たカップルもいたようで、リゾートへの集客にも一役買っているのは確かなようだ。
また、このリゾートには、99年の居住権を持つ24の分譲用のヴィラもあり、2〜6ベッドルームが260万ドル〜1050万ドル(約2.9億円〜11.8億円)で販売されている。管理はリゾートが行い、オーナーは、自分が使わない時期はリゾートのウェブサイトを経由でホテルの部屋同様に貸し出すこともできるため、投資として購入するヨーロッパやシンガポール、香港の富裕層もいるという。
11月、タイ国内外からのメディアを対象にした行われたイベントでは、7ベッドルームある分譲エリアのヴィラで、タッサナカジョンによるスペシャルランチが提供された。この料理を楽しみにやってきた、と言うメディアも多く見られた。
ダイニングエリアでの食事だけでなく、ヴィラのキッチンで作り方を説明するマスタークラスも同時に行うことで、有名シェフの食を切り口に、“プロのシェフも料理ができるほどの充実したキッチンがあるヴィラ”の紹介も同時に行えるというわけだ。
食と旅は、切っても切り離せない。都市に人を呼び込むためのガストロツーリズムの波は、世界に広がりつつある。そしてそれは個別の最高級リゾートにも及んでいるのだ。
「革新を表現し、滞在を決める要因として、料理はとても重要です」とラーク氏も強調する。そして、ただ高級な食材を使った料理ではなく、どのようにその地域の魅力を解釈し、洗練された料理の形で表現していくのか、その土地でしか表現できないガストロノミーが、今後さらに求められていくのだろう。
ヴィラからの夕景