推奨が正しいのか? 米IBMの「テレワーク廃止」から考えたいこと

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ヤフーとIBMの状況には相違点が見られる。

ヤフーの場合、テレワーク禁止を発表した後にわかったことは、ずさんな勤務実態だ。テレワークを利用していた社員が勤務時間中に副業していたり、自分の会社を立ち上げていたり、ということが明らかになった。マネージャーが適切にテレワーカーを管理しておらず、野放し状態だったのだ。「誰も見ていない場所で、会社の同じ成果を出す」ためには、適切なマネジメントが不可欠だということがわかった。

IBMの場合、特定のオフィスに属さず、フルタイム在宅勤務をしていた社員が主流だった。それによりオフィスコストは削減できたが、チームワークやコミュニケーションが欠如したことのデメリットの方が大きいと捉えたのだろう。米国は国内でもニューヨークとロサンゼルスだと3時間の時差があるほど国土が広い。そのため、共働き夫婦等が遠隔勤務を希望することが少なくなく、そのような状況の対応としてフルタイム在宅勤務やサテライトオフィスが発達していったのだ。

しかし、フルタイム在宅勤務は、個人の仕事は効率良く担えるが、他の人たちとのコラボレーションや協力体制を築くことにはハンディとなることは事実だ。

今回IBMは、オフィス勤務をさせることにより、社員同士が頻繁にフェイスツーフェイスのコミュニケーションが取れ、一体感やコラボレーションが向上することを期待しているのだろう。また、イノベーションは、人同士の何気ない会話や直接に顔を合わせている時に生まれるため、その機会を増やすオフィス勤務が、今のIBMには重要なのだ。

さて、興味深いことは、イノベーティブな企業で著名なグーグル、アップルやフェイスブック等は積極的にテレワークを進めていないこと。必要な時は利用できるが、普段はオフィス勤務する社員が一般的だという。有名な建築家による新オフィス、無料の社員食堂、車の点検サービスやさまざまな部活動を提供し、会社に来たくなるようなオフィス作りをしているのだ。

テレワークは生産性や社員満足度の向上等のメリットの多い働き方だ。今後米国でも、日本でも、世界でも、より浸透していくとは感じているが、「何のためにオフィスで仕事をするのか」という根本的なことが見直されてくるのではないだろうか。

文=パク・スックチャ

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