インターネットが「家族」をアップデートしていく時代へ

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もしお互いの生活や様子が見えていなかったら、僕は娘にとって、ただ“外で何をしているかよくわからない父親”になってしまっているでしょう。例えばひと昔前なら、単身赴任の家庭では電話や手紙でのやりとりをする程度で、日常ではほとんど顔を見られないのが当たり前でした。

しかし、インターネットでいつでもつながれることで、今はそれぞれが自分の現場で頑張っている姿を共有できる。
 
例えば家族でも恋人同士でも、それぞれがやりたいことをやったり、仕事をやっていくためには、一緒に過ごせない時間が増えたり、離ればなれになる機会も増えますよね。そこには「一緒に居たい気持ちも、あなたに輝いていてほしい気持ちも本当」というジレンマがある。
 
でも、遠距離恋愛だって、昔に比べればかなりハードルが下がったと思いませんか? かつては恋人との電話代のためにバイトしたり、相手の日常がわからなくて不安になったりしていた。今はそれらをインターネットが繋げて共有してくれる。物理的距離が離れても、精神的距離を近づけることができるから、つながりを強化できる。

家族の「正しい形」とは?
 
例えばあるフリーランスの女性はアウトドア派で、とても自然が好きだけど、夫の会社が東京にあるために都市部の生活を避けられず、それが苦しいあまりに結婚当初は喧嘩が絶えなかったそうです。

そこで、一ヶ月のうち半月を実家のある田舎で過ごしたり、島を旅したりして、離れている間は毎晩Skypeで会話をし、夫婦二人だけのSNSグループを作り、旅先で気づいたことや感動した風景、考えたことをどんどんシェアしていったそう。すると、夫も次第に田舎や自然に興味をもつようになり、一緒に旅行する機会も増え、ついに移住を考えてくれるようになったのだとか。

彼女は、自分が不在がちなことについて、度々夫に「本音ではどう?」と聞くそうですが、「もちろん寂しいけど、君が東京にいるよりもずっと生き生きしている姿を見られて、すごく嬉しいよ。『自分らしくいられる場所で、楽しんでくれている』って思えると、僕も仕事を頑張ってる姿をもっと見て欲しいって思えるし、頑張れる」と答えてくれているそうです。

確かに、お互いがストレスを抱えたまま家のなかで話すよりも、お互いが自分を好きになれる場所、自分を好きになれる時間をしっかり持てる環境で会話をしたほうが、もっと愛し合えますよね。
 
インターネットでいつでもどこでも無料でつながれる今、家族の形は、必ずしも常に同じ屋根の下に居続けるのが本当に正しい形なのか? 家族のそれぞれが自分の好きな環境、やりたいことができて、それを応援しあえることを理想とするならば、適度にインターネットを応用しながら、物理的距離ばかりに縛られないように工夫してみるのもいいんじゃないかと思うのです。

一緒に居られる時はうんとスキンシップをとって、離れている間は集中して、そんな姿をインターネットを通して応援し合う。そんな家族の形があってもいいと思いませんか?

尾原和啓の「働き方革命最前線 ─ポストAI時代のワークスタイル」
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文=尾原和啓

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