雇用に懸念を表明するデータや報道を挙げていけば枚挙に暇がないが、なかでも国連の動きは象徴的だ。
海外メディアによって、国連がAIおよびロボットの導入による大量失業や自律兵器の拡散を監視する常設組織「人工知能・ロボットセンター(Centre for Artificial Inteligence and Robotics)」を設立すると明らかにされたのは今年9月のこと。国連は2017年初めにオランダ政府と協定を締結。今後、同国ハーグにその常設組織を設置する計画だという。
国連の関連組織はこれまでも、人工知能に関するプロジェクトをいくつか推進してきたが、どれも一時的な取り組みに過ぎなかったという。一方、今回の常設組織は、それら活動とは一線を画す本格的な取り組みを目指すために設立されると説明されている。
国連などが懸念するように、AIおよびロボットの普及による大量失業は本当に起こるのだろうか。その結末は「神のみぞ知るところ」だが、現在の議論を見るに不安を煽る方向に偏りがあることも否定できない。なくなる仕事に議論が集中するあまり、テクノロジーの発展によって増えたり、もしくは新しく生まれる仕事については、ほとんどフォーカスされていないのだ。
そこでここでは、AI・ロボット時代に増加、もしくは新たに生まれると予想される仕事を検証してみることにしたい。
エンジニアやデザイナーの需要が増える
まず、AIやロボット、IoT端末(ドローンや自動走行車なども含む)が活躍する未来においては「イメージ感知」の精度を上げるためのセンシング技術を開発・活用する仕事の需要が増えるだろう。AIを搭載したハードウェアが正しく動作するためには、周辺の人々、障害物、状況などさまざまなデータを正確に把握・検出・収集する必要がある。
そうなると、悪天候や深夜などの条件に捉われない高感度センサーを開発する「スマートセンサー開発者」や、各種映像データを認識・解釈するためのアルゴリズムを開発する「コンピューターによる認識技術のスペシャリスト」が必要になってくる。同じくイメージ感知の分野で言えば、3DプリンタやVR技術に長けた「モノ・空間スキャンの専門家」が登場するかもしれない。彼らは、現実をデジタルに、またデジタル情報を現実に変換する役割を担うことになるだろう。
第二に、機械が人間の介入なしに自律的にものごとを判断できるようにすること、つまり「機械の知能化」に関連した仕事が増えるとも予想できる。未来においては、これまでとは比較にならない膨大な量のビックデータが生まれると言われている。それらを人間がひとつひとつ収集し、細かく分析していくことは事実上不可能だ。それよりも、機械を知能化させて効果的かつ効率的に使いこなす方法を生み出す仕事が必要になる。
例えば、「生成的AIデザイナー」といったような職業が生まれるかもしれない。彼らが開発するのは、ビックデータを基に最適化された製品の強度、柔軟性、サイズなどを自律的にデザインしてくれるソフトウェアだ。生成的AIデザイナーは、それら知能化されたツールを駆使して、ユーザーの好みや使用環境に合わせた電子製品、自動車、スポーツ用品などデザインしていく。