「望む仕事」でなく「今の仕事」に集中するべき理由

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「今の仕事に合わせた服ではなく、望む仕事に合わせた服を着よう」。これは、上昇志向の若手社員がビジネス上の美学を養ううえでの姿勢を説く上で、長年にわたって使われてきた言葉だ。

職場環境はますますカジュアルになっており、あなたが望む仕事に就く人は最近ではパーカーに短パンという恰好で出勤しているかもしれない。それにもかかわらず、仕事で成功するには現在より将来に集中するべきだ、というのは凝り固まった定説となっている。

だが本当に、目先の責任ではなく将来の目的に目を向けることが、出世するための最善の方法なのだろうか?

成功したCEOたちに尋ねてみれば、答えは「ノー」だろう。米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、アダム・ブライアントは最近の記事で、自身のコラム「コーナー・オフィス(角部屋)」執筆のために行った500人以上のCEOとのインタビューで得た英知の一部を紹介している。

ブライアントが発見した重要なテーマに、次のことがある。CEOたちは、未来志向になるのではなく、自分の役割をしっかりと果たすことに集中していた。そしてそうしたCEOたちの成功の実績とは、出世の階段を上った際に受けた評価に基づいたものだった。ブライアントは次のように指摘する。

「当たり前のように聞こえるかもしれないが、多くの人は、自分がやっている仕事よりも、自分が望む仕事のことを気にかけているように見える。野心を抑えろという意味ではない。もちろん、キャリア上の目標を持ち、それを上司とシェアし、幅広いビジネスの仕組みについてできるかぎり学ぶべきだ。そして、もちろん、社内政治について精通するべきだ(特に、すべてを自分の手柄にしたがる目立ちたがり屋の社員には注意が必要だ)」

現在やっていることを、将来やりたいことの糧にする、という考え方は巷で広がっている。今の業務よりも昇進のチャンスを優先することを決めた社員は、簡単に見抜くことができる。

そうした社員は、「新鮮」なアイデアや特別なプロジェクト、会議のアジェンダを振りかざし始める。「リーダーになる前にリーダーシップ能力を証明する10の方法」といった記事をむさぼり読み、まさに今の仕事ではなく望む仕事に合わせた服を着ている。そしておそらく、今の仕事は自分には取るに足らないものと思っているため、日々の業務に影響がでているだろう。

場合によっては周囲から、イニシアチブをとることはすばらしいが、今月の売り上げノルマを犠牲にするべきではないとたしなめられるかもしれない。あるいは逆に、昇進の夢をかなえ、さらにその次の昇進も手にするかもしれない。
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編集=遠藤宗生

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