同国のコンサルティング会社、ブランド・ファイナンスは毎年、王室の資本価値(英国経済にとっての商業的価値)を推計、金額を公表している。また、報告書は王室所有の有形資産が生み出す価値だけではなく、その「ブランド」の影響力をはじめとした無形のものによる貢献も考慮し、同国にもたらされる経済的利益を割り出している。
ただし、資本価値には女王とその親族であるウィンザー家が英国民として個人的に保有する資産そのものの価値は含まれていない。また、先ごろバミューダ諸島にある法律事務所から流出した「パラダイス文書」には、各国の企業名とともに女王の名前が記載されていたが、節税のためにオフショア口座を使うことは、法的に問題のあることではない。
より高価値な「英王室」というブランド
バッキンガム宮殿、王室所蔵の芸術作品や宝飾品、ランカスターとコーンウォールの公領といった王室が所有する有形財産の価値は、約330億ドル(248億ポンド)に上る。だが、報告書によれば英国経済により大きな経済的利益をもたらしているのは、王室のブランド力だ。ブランド・ファイナンスの最高経営責任者(CEO)はロイター通信の取材に対し、「王室は英国の大規模なPRキャンペーンを行う組織のようなもの」だと説明している。
王室が英国の観光業やビジネス、ファッションその他の分野にもたらす経済的利益は、およそ550億ドル(413億ポンド)に上ると見積もられている。観光業には年間およそ5億5000万ポンド、王室メンバーが公務で訪問する国とのビジネスには、およそ1億5000万ポンドの利益がもたらされている。
さらに、ファッションで世界的に注目されるキャサリン妃(ケンブリッジ公爵夫人)が選び、身に付けることはそのブランドへの非公式なエンドースメントと受け止められ、各社の利益に及ぼす影響力は、金額にしておよそ2億ポンドと推計される。
そのほか、メディアが王室メンバーを常に追い続けていることや、王室の歴史やメンバー個人の私生活を題材にした映画やドキュメンタリー、TVドラマシリーズが制作されていることも、年間5000万ポンド近い経済効果を上げている。
「英王室御用達」の許可を取得することで企業の商品に与えられる価格プレミアムもまた、総額およそ1億9000万ポンドの利益につながっている。御用達の商品やサービスには、「アストンマーティン」(自動車)や「プレスタ(Prestat)」(チョコレート)、「フォートナム&メイソン」(百貨店)などさまざまなものがある。
ただし、こうした経済効果は「ただ」で得られるものではない。英国の納税者は今年、約2億9200万ポンドという安くはない王室費を負担している。