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Forbes JAPAN 編集部 編集長


2017年8月、朝日新聞にこんな見出しの記事が掲載された。

〈「がっかり遺産」回避へVR遊覧 百舌鳥・古市古墳群 〉

仁徳天皇陵など古墳群がありながら、せっかく訪れた観光客の目に飛び込むのは、「立入禁止」の文字。さらに教科書で見るような上空からの写真も、巨大すぎて近くからは見えない。世界遺産の候補でありながら、「がっかり遺産」と呼ばれるのはそのためだ。そこで村多たちのチームが作り出したのが、「VR擬似体験ツアー」である。バーチャルリアリティを使って、「1600年以上前の古墳」を仮想現実で体験できるというわけだ。

村多たちエリア・アライアンス部は、他にも「練馬アニメカーニバル2016」「港区ゴスペル」といった「港区文化芸術フェスティバル」、岐阜県大垣市の大垣祭での行事、各地のユニークなPR映像、IターンやUターンを促す地域ドラマ、そして冒頭で紹介した「The SAGA Continues…」と、バラエティに富んだ作品を“共業”し始めた。

中でも、2017年5月に発売した『唐津小唄』は地味ながらもニュースになった一つだ。これは、北原白秋が昭和4年に作詞した北九州鉄道のCMソングである。

「当時、北原白秋は全国でこうした観光ソングを作っていて、唐津小唄は石炭を輸送していた同鉄道が役割を終えた後も、盆踊りなどで地元に定着していました。しかし、徐々に消えていき、50歳以下はその存在を知らない状況になりました。そこで北原白秋が関わった文化遺産を次世代に継承しようと、地元の有志たちが団体を立ち上げることになったのです」


唐津小唄を保存する会。

たまたま趣味で唐津焼きの研究をしている村多が、行きつけの唐津の寿司屋でこの話を聞き、一役買うことになったのだ。

「私たちがやっているのは、もともとその土地にあるものを時代性に合わせてアップデートすることだと思うんです」と、村多は言う。「その土地で食べたり話したり、あるいは風景に感じたりしていると、その土地ならではのストーリーが必ずあります。そうした“点”をつないで“線”にして物語として紡いでいくことが僕らの仕事だと思うのです」

12月8日、村多は冒頭で紹介した人気ラッパー、KEN THE 390と渋谷・ヒカリエに登壇する。地域の資源を企業や社会起業家たちが掘り起こすイベント「まちてん」で、「エンタメでシビックプライド機運醸成!」と題して、トークセッションを行う(来場参加にはHPからの登録が必要)。

村多がこんな話をする。

「入社して間もない若い社員たちが、エリア・アライアンスの仕事をやってみたいと賛同するようになったんです」

見向きもされなかった地方に魅力を見出そうとする若者たち。「地方消滅」と言われる時代に、価値を再発見しようとする者たちが確実に増えているのだ。

文=藤吉雅春

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