ビジネス

2017.12.20

グーグルよりも上? 気鋭のAI研究者が率いる「クラリファイ」

マシュー・ズィーラー クラリファイ創業者兼CEO


ズィーラーはクラリファイをグーグルやマイクロソフト規模にしたいとは考えていない。だが、AIの領域で中立的ポジションをとることは非常に重要だと考えている。実際、AI分野のスタートアップは、蓄積したデータをグーグルやアマゾン等の巨大企業に吸い取られる恐怖にさらされている。

写真共有サービスのフォトバケットは現在クラリファイのサービスを利用中だが、同社の幹部は「グーグルの解析サービスを利用する場合は、自分たちのデータをシステムのトレーニングに利用されてしまうと考えたほうがいい」と語る。フォトバケットはかつてグーグルの画像解析サービスを用いていたが、その後、グーグルが自社の写真アプリにフォトバケットの競合となる機能を盛り込んだ。ズィーラーによると、これは一例にすぎない。

「グーグルを使っていると、彼らはある日、自社の競合となるサービスを立ち上げる。クラリファイはそんなやり方はしたくない」
 
15年にクラリファイはユニオン・スクエア・ベンチャーズの主導で1000万ドルを調達。その翌年には3000万ドルを調達。当時の評価額は1億2000万ドルだった。
 
調査会社キャップテックによると、クラリファイは画像認識分野でアマゾンやグーグル、マイクロソフトと拮抗し、時に上回る実績をあげている(ページ下図参照)。もっとも、クラリファイが直面している課題の一つにアルゴリズムを鍛えるために必要なビッグデータへのアクセスの確保がある。この点で同社は大手に後れを取っている。
 
クラリファイが直近で力を注いでいるのは、大手が注力するクラウドのデータではなく、スマートフォンをベースとした画像のAI解析だ。ズィーラーはiPhone 6を手に「この端末のカメラは周囲にあるすべての物体を認識し、室内の家具やクルマ、歩行者のデータを取得する」と語る。

「私たちがしている事は、今後AIが果たすべき仕事の氷山の一角に過ぎない」

各社の画像認識レベルはいかに?

ディープ・ラーニング(深層学習)を使った画像認識システムの多くは、画像がどういったカテゴリーに属しているかを推測し、特定しようとする。その際、信頼度も合わせて提示するのだが、今回、クラリファイとグーグル、IBM、マイクロソフトがクロワッサンとメイン・クーン種のネコをどのように認識したかをご紹介しよう(唯一、マイクロソフトは画像を説明する「キャプション」に対してのみ信頼度を提示する)。




MATTHEW ZEILER(マシュー・ズィーラー)◎AI画像認識企業「クラリファイ」の創業者兼CEO。1987年、カナダ生まれ。トロント大学の学部生時代にAI研究を始め、“ニューラル・ネットワークの父”ことジェフリー・ヒントン教授に師事する。首席で大学を修了したのち、ニューヨーク大学で博士課程に在籍。グーグルのインターンを経て、2013年11月にアパートの自室でクラリファイを立ち上げた。

文=アーロン・ティリー 写真=フランコ・ヴォクト 翻訳=上田裕資

この記事は 「Forbes JAPAN CxOの研究」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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