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東京モーターショーにて「過去・現在・未来」をテーマにブースを構えたポルシェ。 サスティナブルな自動車づくりの未来に向けた選択と、その背景にある哲学とは。


10月27日から11月5日にかけて開催された「第45回 東京モーターショー2017」。ひときわ注目を集め、来場者が後を絶たなかったのがポルシェのブースだ。

アジア初のお目見えとなった新型「カイエン」や、日本初公開の新型「パナメーラ スポーツツーリスモ」をはじめとする最新の車両を展示するなか、もっとも象徴的な位置には1948年に誕生した356シリーズより「356スピードスター」をディスプレイ。今日に至るまでポルシェが進化を続けてきた道程を感じさせる構成のなか、運転席に乗り込み、ポルシェのエンブレムが配されたステアリングを握る来場者たちの表情は明るく輝き、ポルシェが、自動車ファンの憧れとともに認識されていることを表していた。


写真上:東京モーターショーに設けられたポルシェのブース。「過去・現在・未来」というテーマで往年の名車から日本初公開の最新モデルなどを展示。VR体験のブースも設けられた。

果たして、ポルシェはこの東京モーターショーの展示により何を伝えようとしていたのか。そして将来に向けて見据えるものとは。時代が変化するなかでのサスティナブルなモビリティとは? ポルシェ ジャパン代表取締役社長の七五三木(しめぎ)敏幸がインタビューに応じ、小誌の問いに答える。

―今回の「第45回 東京モーターショー 2017」では、ポルシェが考える“「進化と挑戦」をし続けるロードマップを、そしてスポーツカーの過去・現在・未来を、Porsche Intelligent Performanceというテーマで表現します”という説明がなされていましたが、この展示コンセプトについて詳しく教えてください。

七五三木敏幸(以下、七五三木):今回、このブースで表現しようとしたことは、まず、ポルシェの起源がどこにあるのかということです。ポルシェでは常に答えは車にあります。今回は「356 スピードスター」を、ポルシェの出発点である過去を象徴するものとして展示しています。

創業者であるフェリー・ポルシェが語った「小型で軽量、そしてエネルギー効率に優れたスポーツカー。私は自らが理想とするこうした車を探したが、どこにも見つからなかった。だから自分でつくることにした」という言葉がありますが、この言葉にはポルシェの挑戦心と、いまなおスポーツカーメーカーとしてあり続けるポルシェにとっての哲学を表現しています。そして、今回のブースでは将来的に我々がどこへ行こうとしているのか、言い換えれば、スポーツカーを未来に向けて走らせていくためになにをやっていきたいのか。それを表現し、ポルシェを正しく理解していただきたいという思いを込めています。

―展示されていた「356 スピードスター」がポルシェの「過去」だとすると、「現在」にあたるのが新型「カイエン」、そして「パナメーラ スポーツツーリスモ」だと思いますが、この2車種は新世代のポルシェをどのように象徴しているのでしょうか。

七五三木:まず、カイエンはSUVのカテゴリーにスポーツカーの要素を盛り込んだ先駆者であり、モダンな最先端のコネクティビティを積極的に盛り込んでいます。現代の車にとって重要な要素をすべてつぎ込むと「カイエン」になる、そういえるでしょう。

そして「パナメーラ スポーツツーリスモ」は乗る人にとって、自分を表現することのできる車です。スポーツカーを所有し、アクティブに休暇を楽しみ、かつ日常生活においても車を使いこなすというスタイルを具現化するもので、価格帯やボディタイプなどによる販売上のマトリックスを埋めるものではなく、あくまでもポルシェオーナーとしてのスタイルを表現する車として開発されている、新しいポルシェの提案です。



(上)ポルシェの名を冠した初の自動車「ポルシェ356」。初代は1948年に誕生。(下)最新のポルシェのスタイルを象徴する「パナメーラ スポーツツーリスモ」。今回の展示が日本初公開である。

また、今回の東京モーターショーでハイライトされている「パナメーラ ターボSEハイブリッド」はエンジンとモーターで680馬力を発生させる、パナメーラモデルのトップパフォーマンスに位置するモデルです。ポルシェが考えるPHEV技術の方向性を具現化しています。

―パナメーラの最上位モデルにPHEVを設定していることは、ポルシェが考えるサスティナブルモビリティの方向性を示しているのでしょうか。

七五三木:まず、車として大事なことは走って使えること。決して飾るためのものではありません。いかなる社会の状況、与件の中でもスポーツカーのドライビングができることをポルシェはお客さまにお約束します。ことによると2040年以降はパリやロンドンではガソリンエンジンのスポーツカーは存在できないかもしれない。そのなかでもスポーツカーのエモーショナルな価値を持つ車を提供するためにパワートレインの電動化を選択することは、企業がサスティナブルであるための必要な経営判断です。

―冒頭で「スポーツカーを未来に向けて走らせていく」というご説明がありましたが、温室効果ガスの排出量をゼロにする方向を目指す「パリ協定」は自動車メーカーにとって厳しい課題を突きつけています。

七五三木: 時代とともに社会が自動車に求めるものは変化してきましたが、この「パリ協定」もまた時代により課せられる制約というべきもの。それをメーカーとしてどう解決していくのか。ポルシェではその課題に勇ましく挑戦していきたいと考えています。その拠り所となるのがレースで培った技術の市販車へのフィードバックです。レースという、車にとって最も厳しい環境で得られる技術は、市販車にとっても信頼性の高いものとなり得るでしょう。

ポルシェはその歴史を通じて、効率を求めたスポーツカーをつくるために挑戦を続けてきました。実は、1900年には世界で初めてのハイブリッドカーを開発していたという事実があるように電動化についても早い段階から検討をしていました。ル・マン24時間耐久レースで3連覇を果たした「919ハイブリッド」に搭載されているハイブリッドエンジンをはじめとする最先端の電気化技術は、現在販売されている市販車に反映し、展開しています。時代の与件は様々に変化しますが、レース、そしてスポーツカーというポルシェのDNAは過去、現在、そして未来においても変わらないものであり、未来への方向性であるEVという技術についてもレースという場を通じて開発を進めています。

ポルシェ ジャパンとしては、2020年までに販売台数の40%をEVおよびPHEVとするために大きく舵を切ります。EVの専門チームの立ち上げ、販売店舗での充電設備での投資、そしてポルシェらしいEVおよびPHEVの訴求を進めることにしています。

―今年の7月末には、ポルシェは2017年シーズン限りでWEC世界耐久選手権、そしてル・マン24時間耐久レースから撤退することを発表しました。そして2019/20シーズンからは電気自動車のフォーミュラカーレースであるフォーミュラEへの参戦をあわせて発表しています。

七五三木:レースというフィールドが、ポルシェにとって重要な場であることは繰り返しお話してきたことでもあります。パワートレインがどうあれ、最先端の技術を追求し、ル・マン24時間耐久レースで3連覇を達成したようにポルシェが最高の技術を持つことをレースで証明していくことも、今後変わらない部分です。

WEC世界耐久選手権、そしてル・マン24時間耐久レースに参戦した「919ハイブリッド」は回生ブレーキによる充電機構を備えていますが、この技術はパナメーラやカイエンにも活かされています。そしてこれはポルシェのカルチャーでもあるのですが、レースに関わるチームではドライバーを含めて「こんなデバイスがあったらもっと速く、安定して走れる」ということへの関心が非常に高い。それは効率化ということだけでなく、安全装備への落とし込みという部分でも市販車へのフィードバックとして役立てています。

―過去、現在、そして未来という観点においては、スクリーンにも映し出されていたEVコンセプトカー「ミッションE」が未来への方向性を強く指し示しているように感じます。

七五三木:ミッションEはまさにポルシェが描く未来への志向を象徴する車です。20年までに市販化を目指し、開発と環境整備を進めています。

またピュアEVであるミッションEを日本に導入するにあたっては、まず充電インフラの整備が必要です。これには様々な選択肢がありまだお知らせできる段階にはありませんが、販売店舗への充電設備設置に向けた投資を含めて取り組みを強化していきます。ミッションEの航続距離とあわせてどのような充電インフラが必要であるのかを考慮し、ユーザーにとって不自由のない環境を構築していきます。



(上)レースというポルシェのDNAを象徴する「911」もモータースポーツファンの熱い視線を集めた。(下)大型ディスプレイにはポルシェの未来を示すピュアEV「ミッションE」が映し出された。

このミッションEに象徴されるEVが今後ポルシェにおいて中核になる技術であることは間違いありません。様々な車がEV化していくでしょう。しかし、全車種がEV化するというわけではなく、PHEVも同時に提供し、もっとも効率のよいスポーツモビリティを提供することを重要と考えています。

―― お話を通じて、ポルシェというメーカーがお客さまに提供しようとしているものに、強い一貫性を感じます。

七五三木:やはり我々はスポーツカーメーカーであるということ。それはフェリー・ポルシェの時代から一貫している哲学です。様々なボディタイプの車種をラインアップしていますが、あくまでもスポーツドライビングを提供するのがミッションであり、期待以上の驚きと歓びをあわせて提供することを自らの使命と考えています。

「こういう車が欲しい」という顧客の声を聞くことは重要です。その通りの車を届ければ100%期待に応えていることにはなりますが、我々としてはお客さまの期待値を上回ることで「感動の体験」を届けることになると考えています。ワン&オンリーの感動体験をどんどんお客さまに提供する。それによりポルシェの価値が向上し、ポルシェに乗るお客さまの満足度を高めていくことに繋がります。

ポルシェはスポーツカーを提供するメーカーです。スポーツカーを通じて、インテリジェントなパフォーマンスとして最も卓越し、かつ高効率なスポーツモビリティを提供することをお約束します。

それは常にお客さまの期待を上回るものでなければいけません。それにより、スポーツカーを運転するという、エモーショナルな満足感を得ていただくことができるのです。これは、時代の要請により経営環境が変化して、ガソリンエンジンから電気モーターへとドライブトレーンが大きく変わるとしても、どのような環境でもポルシェが提供し続けるものです。

この一貫性を持ったクルマづくり、そしてブランドとしてのコミュニケーションは、車の購入を具体的に考える大人だけに向けたものではありません。「子供の頃に見た、乗せてもらったポルシェにいつか乗りたい」。そんな未来のポルシェオーナーである子供たちにとっても、ポルシェが憧れの車であり続けるよう、我々は努力を続けていきます。



七五三木敏幸◎ポルシェ ジャパン代表取締役社長 1958年生まれ。一橋大学卒業後、群馬銀行入社。89年メルセデス・ベンツ日本に入社。クライスラー日本CEO、フィアット・クライスラー・ジャパン本部長を経て、2014年1月より現職。

Promoted by ポルシェ ジャパン text by Tsuzumi Aoyama | photographs by Yozo Yoshino (Y's C) 青山鼓 = 文 吉野洋三(Y’s C) = 写真

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