東証一部上場企業の88%が、経営から独立した立場の社外取締役を2人以上選任している──。
東京証券取引所が発表した、上場企業が提出したコーポレート・ガバナンス(企業統治)に関する報告書の集計結果だ。前年比8.3ポイント増と増加傾向にある。また、独立した社外取締役が全取締役の3分の1以上を占める企業も前年比22.7ポイント増の27.2%となった。同じく、女性の社外取締役も552人と昨年の479人から15%増加し、起用した企業も500社弱と4社に1社を上回った。
上場会社に対して、独立した社外取締役を「少なくても2人以上選任すべき」とした、2015年に金融庁・東京証券取引所が策定したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)のいい影響が出ている。
また、取締役会の役割を評価する上場企業も増えている。東証の調査では、7月時点で、71%の上場企業が取締役会の評価を行い、16年12月末の前回調査から16ポイント上昇。73の原則を全て実施した企業は26%と前回から6ポイント上がっている。こちらもコーポレートガバナンス・コードで求められており、評価により、企業統治の課題を見つけ、取締役会の機能向上を行う。
安倍政権が成長戦略として掲げた、企業の本来の姿である「稼ぐ力」を強化するために行われたガバナンス改革は一定の成果をあげつつある。
「HOYAの鈴木洋社長から出た『ガバナンス・マターについては、完全に社外取締役主導になった』という言葉はとても印象的だった。社長が、社外取締役の意見が割れた時の仲裁役になっていることをイメージできるだろうか」
日本取締役協会が主催する「コーポレート・ガバナンス・オブ・ザ・イヤー」。企業の持続的な成長を実現し、効率的かつ革新的な経営を後押しするためにも、コーポレート・ガバナンスが必要だとし、コーポレートガバナンス・コードに準拠し、ベストプラクティスを実現する企業を表彰している。2017年の大賞はHOYAが受賞した。審査委員を務める一橋大学CFO教育研究センター長、一橋大学大学院商学研究科特任教授の伊藤邦雄氏はそのように表彰式で語った。
大賞を受賞したHOYAは「コーポレート・ガバナンスの理想形をほぼ完成している」と評価された。具体的には、1. 社外取締役が過半を越える取締役会が、中長期的な企業価値の向上を支えていること 2. コーポレート・ガバナンスの重要な要素である、経営者の選定・解任、サクセッションプラン(後継者育成)についても、平時・非常時も含めて準備ができていること 3. 経営者も社外取締役に監督され、それを自覚した上で経営に臨んでいる点だ。
「形だけでなく、株主価値を大事にし、株主上位の考えを持つ。ガバナンスがビジネスの厳しい意思決定に結びついている」(伊藤)