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(Photo by Hagen Hopkins/Getty Images)

ニュージーランドでは10月、労働党を率いる37歳のジャシンダ・アーダンが首相に就任した。同国の政界に若いエネルギーをもたらしたアーダンだが、一部の国民の間からは、1970~80年代前半にかけての「古き悪しき時代」の再来をいぶかしむ声が出ている。

それは、選挙活動中のアーダンの「資本主義は明白な失敗」などという一連の発言が原因だ。ニュージーランドが共産主義ではない国の中で最も経済の自由を持たない国だったのは、それほど昔のことではない。通信から輸送、銀行、ホテル業まで、産業の大半が国営だった。資本規制も厳しく、海外資産の保有も禁止されていた。税率もインフレ率も懲罰的に高く、政府の債務残高も他に例を見ないほどの高水準だったのだ。

1980年代になると、政府の規模と役割の範囲が大幅に縮小され、サプライサイドの革命が始まった。すると、ニュージーランドは過去に例のない経済成長を経験。経済の自由度ランキングでも香港、シンガポールに続く上位に食い込み、世界で最も豊かな国への仲間入りを果たした。

「先駆的」政策に反発

ニュージーランドの成功は一部に、順調な経済運営を可能にした中央銀行の金融政策によるものだった。ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は世界に先駆けてインフレ目標を導入。その他各国の中央銀行もその後、インフレ目標を設定するようになっている。

だが、アーダンが異議を唱える政策こそ、このインフレ目標の設定だ。新首相は自国のインフレ率は目標を大きく下回っていると見ており、RBNZはもう一つの目標として、失業率の低減を掲げるべきだと主張している。同国の失業率は4.6%ですでに低い水準だが、首相はこれを、4%を大幅に下回るレベルにまで引き下げたいとしている。

アーダンは、失業率を改善するためならRBNZは、長年をかけて実現してきたことの全てを危険にさらすことになっても、インフレ率の上昇を容認すべきだと言う。金融政策決定会合に外部委員を参加させることも要求しており、実現すれば確実に、委員にはハト派が増えることになるだろう。

一方、アーダンが首相就任後にまず取り組んだことの一つが、外国人投資家による中古住宅購入の禁止だ。ニュージーランドはどう見ても、世界で最も不動産バブルの崩壊が懸念される市場だ。外国人による不動産購入を禁止すれば、崩壊の危険性は高まる。

首相はまた、連立パートナーであるニュージーランド・ファースト党のウインストン・ピーターズ党首とともに、移民の受け入れ枠を大幅に縮小する考えを明らかにしている。だが、長年にわたってニュージーランド経済の成長に大きく貢献してきたのは、高い技能を持った移民たちだ。

税制については就任から間もないこともあり、首相の方針はあまり明らかになっていない。ただ、野党となったニュージーランド国民党が掲げていた減税案は今のところ、検討されていない。

ニュージーランドは新政権下で、景気後退を経験すると予想される。70年代のような状況になると見る人はいないが、「世界で最も開かれた自由な経済」という立場は失うことになるだろう。

強い経済を実現するには、数十年がかかる。それと同様に、経済が弱体化するまでにも時間がかかる。だが、それでも投資家たちは、当面のところニュージーランドは避けるべきだと考えることだろう。

編集=木内涼子

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