ビジネス

2017.11.23 11:00

イメージチェンジをはかる「ボルドーワイン」、改革を仕掛ける日本人とは

Valentyn Volkov / Shutterstock.com

Valentyn Volkov / Shutterstock.com

最近、「ワインの女王」に元気がない。

今秋、番組の撮影で久しぶりにボルドーを訪ねた時のことだ。旅の目的はAOCボルドー&ボルドーシュペリウールのシャトー巡りだ。季節は収穫の最盛期。雲ひとつない青空の下、ボルドーの雄大なぶどう畑の中を歩くというのは、何度来ても最高に贅沢なものである。今回は7つのシャトーを訪ねたが、もちろん畑をまわるだけでは取材は終われない。ボルドーにはぶどう畑以外の観光名所も十分にあるのだ。

世界遺産に登録されているボルドー旧市街の撮影の合間に、カフェやレストランを覗いてみた。すると、ワインを飲んでいる若者よりは、ビールを飲んでいる若者の方が多いことに気づく。彼らにワインは飲まないのかと話を聞くと、「ワインは古臭いし、難しい」という。

どこかで聞いたような話だな、と思う方も多いのではないか。ご存知の通り、日本は近年日本酒ブームの真っ只中である。しかしひと昔前はといえば、日本酒は酔っ払いのオヤジが飲む、ダサい飲み物というイメージだった。同じような現象が、「ワインの女王」と讃えられ、その生産と輸出で富を築いて来たここボルドーでも起きているようだ。

ボルドーワインのお膝元でのこのような状況が、近年日本でも良からぬ影響を与えてはじめている。

フランスといえばもちろん、今も昔も世界トップクラスのワイン生産国である。日本への輸入量についても、長年にわたり1位というのがフランスの定位置だった。

しかし2015年に転機が訪れる。フランスワインの輸入量がチリワインに抜かれたのだ。フランスワインの中でも最大の生産量を誇るボルドーの生産者たちは、当時はこの事実をそれほど重要な問題として考えていなかった。ボルドーワインのアジア戦略にとってみれば、もっとも重要なターゲットは多分にもれず中国であるからだ。

しかし、そんな彼らの尻にもようやく火がついてきたようだ。国税庁の調査によると、近年の日本人のワイン消費量は右肩上がりを続けており、4年連続で過去最高を更新している。フランスワインの首位転落劇は、日本人のワイン離れが原因というわけではく、単純にフランスワインの人気がチリワインに抜かれたということがはっきりしているからだ。フランスワインを牽引する存在のボルドーワインが、この結果に少なからぬ影響を与えていることは言わずもがなである。

では、なぜ人々はボルドーワインを飲まなくなったのか。そこには様々な理由があるだろう。しかし、やはり最大の原因こそ、ボルドーの若者がいう「ワインは古臭いし、難しい」というイメージそのものにあるのではないかと思う。ボルドーワインに対してそんなイメージを持っている人が、どうしてボルドーワインを飲もうという気になるだろうか。

芳しくないボルドーワインのイメージを日本から変えようと、挑戦している女性がいる。ボルドーワイン委員会(CIVB)ジャパンカントリーマネージャーの大塚麗子さんだ。

大塚さんは2016年の6月に現職に就いた。聞けば、17年ぶりに日本で働くそうだ。てっきりパリやボルドーで長年暮らしていたのかと思ったのだが、現地で暮らしていたわけでもなく、実はほとんどフランス語が話せないという。では、さぞやワインに詳しいんだろうなというと、ワインもほぼ初心者とのこと。失礼ながらも「あれ、じゃあなんでこの人がボルドーワインのカントリーマネージャーに?」と思うのは致し方ないところである。

でも、まさにそこにこそ、CIVBがボルドーワインのイメージ改革に本気で取り組もうという姿勢がうかがえるのだ。
次ページ > 打ち出すのは「バリューボルドー」

文=鍵和田 昇

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事