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音楽、メディア、エンターテインメントビジネスを担当。

Inna Reznik / shutterstock.com

保護者との関係に頭を悩ます合唱団の指導者は稀だ。特に、練習に行くわが子を止めようとする親は少ないだろう。しかし、「YMCAエルサレム・ユース・コーラス」創始者のマイカ・ヘンドラーは、常にその手の問題と向き合ってきた。

「私たちの活動を怪しむ人、全面的に否定する人、なんとか邪魔しようとする人たちが、パレスチナ側にもイスラエル側にもいる」とヘンドラーは言う。「それでもやり続ける。続けることが大事だから」

YMCAエルサレム・ユース・コーラスは、東西に分断されたエルサレムのイスラム教徒とユダヤ教徒の高校生で構成された混声合唱団だ。2012年の設立以来、同合唱団は世界各地で大きな話題を呼んできた。これまでにワシントンDCや東京で公演を行い、「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」などのテレビ番組にも出演。今年前半にはアルバム「بيت Home בית」をリリースした。

フォーブスの2017年版「30 Under 30」(30歳未満の重要人物30名・音楽部門)の一人であるヘンドラーは現在28歳。合唱団を結成する夢は、非営利団体「Seeds of Peace」のサマーキャンプに参加した経験から生まれた。同キャンプは毎年、米北東部のメイン州で開催され、国籍も信仰も異なる若者たちが互いの文化を学び合う。ヘンドラーは最初は子ども参加者として、のちにカウンセラーとして計8年間携わった。

「キャンプ場で、音楽と対話が人々の関係に変化をもたらす様子を目の当たりにした。すべてがきっちり管理され、参加者が逃げたくても逃げられないメインの環境ではこのような変化が起こりうる。では、エルサレムのようにまったくコントロールが効かない環境、常に人が逃げ回っているような環境でも同じことが実現可能なのか?」

その問いは、ヘンドラーのイェール大学の卒業論文「エルサレムの平和のための音楽」のテーマになった。2012年、ヘンドラーは大学を卒業後すぐにイスラエルに移住。実践を始めた。

2014年、パレスチナの少年をユダヤ人過激派が殺害した事件をきっかけに、戦闘が激化し、多数の民間人が犠牲になった。海外ツアーを控えていた合唱団は、少年が殺害された翌日も練習を行った。

「報復が繰り返され、街は凄まじい暴力と怒りであふれていた。練習に来られるメンバーのために会場を開けたものの、生徒たちには危険を冒してまで来るなと伝えた。そんな中、最も争いの激しい地区に住む少女がやって来た。驚いて『どうやって来たの?』と尋ねると、彼女は『家で催涙ガスの匂いに包まれながら銃声を聞いていたら、気が狂いそうになった。家を出たところで路上の兵士たちに止められたけど、振り切って走って来た。ここにいたかったから』と答えた」

難題は他にもいくつもある。冒頭の発言にあるように、合唱団そのものが地域の住民にとっては異質な存在であり、理解を得られないことも多い。

「政治的であると同時に、非政治的な存在でありたい」とヘンドラーは話す。「私たちは、エルサレムをそこに住む人全員の故郷だと考えているが、その主張自体が政治的発言だと思われる」

ヘンドラーの原動力となっているのは、若者たちが放つポジティブなエネルギーだ。

「きついことも多いけれど、彼らがステージで本当に誇らしく幸せそうな顔で歌っている姿を見ると、やってよかったと思う。自分が彼らの声をすくい上げ、世の中に響かせたのだと思うと、最高の気分になる」

設立から5年経ち、合唱団の名声は確立されつつある。ヘンドラーは今、この成功例を他の紛争地域に取り入れる方法を考えているという。

編集=上田裕資

 

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