ビジネス

2017.12.17

経営で行き詰まったら「ミドリムシ」視点で考える

出雲 充(左)、漆原 茂(右)

エンタープライズIT(大企業向けIT)分野でユーザー企業の支援に特化したITコンサルティング会社を運営するウルシステムズの漆原茂氏と、植物と動物の性質と59種の栄養素をもつハイブリッドな生物「ミドリムシ」を使って地球の食料、環境、エネルギー問題の解決をめざすユーグレナの出雲充氏。

東大発ベンチャーの先駆けの両氏に、困難の乗り越え方、会社経営におけるこだわりについて伺った。(第1回目はこちら>>


「顧客の幸せ」も「自分たちの幸せ」も

出雲
:漆原さんは、どうしてスタートダッシュの時に売り上げを急上昇させることができたのですか?

漆原:大企業にいて市場と技術を知っていたからだと思います。少人数でも大手に負けないところ、大手がやらないところ、業務を知らない人は来られないところを見極めることができたんです。外から参入するハードルは高いのですが、すでに中にいたのでそれができました。

出雲:ウルシステムズは、とんとん拍子に売り上げが上り、3年目に社員が80人になったんですよね。でも急成長したもののトラブルもあり、そのまま突っ走って大幅増員するか、仕事内容を入れ替えて80人のままでがんばるか、人数を減らしてリスタートするか、悩まれたと聞きました。どうしてそのまま突っ走って1000人にしなかったのですか。普通そうなると思います。

漆原:僕たちの場合、最初はとにかくお客様の要望を全部聞くようにしました。しかし、やりすぎて修羅場になった。売り上げは伸びましたが、現場は超大変。フィールドを広げすぎて、自分たちの「濃さ」を忘れてしまった。「僕たちは何をしたかったのだろう」と、立ち止まらざるを得なかったのです。現場は必死にやっているのにお客さんはなんだか不満そうで、報われていない。何か絶対に間違っていると……。

出雲:どうして気づいたのですか?

漆原:トラブルが止まらなくなる。メンバーが疲弊していく。それが連鎖的、同時多発的に起きる。みんなが不幸になっていく。僕たちがやりたくなかったITの会社になりかけている、とメンバー全員が思いました。

職人気質が私たちのDNA。僕自身エンジニアで今でもコードを書いています。こだわりをもってお客様に対して高い価値を提供したいと思っています。でも、同時に僕たちも楽しめなければならない。お客様が嬉しいのと、僕たちが楽しいのを両立させないといけない。この両軸がないと、ウルシステムズとして存在できないのです。

以来、無理して規模を拡大せず、「匠」の仕事ができる受注をするようにしました。一時的に売り上げは下がりましたが、高い品質を維持できるようになった。お客様からの満足度も上がり、僕たちもいい仕事ができて幸せ。売り上げと利益も伸びています。

漆原:僕が経営で一番重要だと思うのは、お客様が感動してくれることと、僕らが誇りを持って仕事をできることです。出雲さんは?
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インタビュー=谷本有香 構成=星野陽子 写真=藤井さおり

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