Forbes JAPAN 編集部 編集長


例えば、ある商品周辺での話題を分析して、仮説を立てると、提供するコンテンツの数やタイミングも変わってくる。商品購買・使用後に反応がわかるし、検証もできる。つまり、「これまでの作業がデジタルで深くなる」というわけだ。鈴木はこう言う。

「お客様の生活が変化しているので、自分たちも変化しないといけない。しかし、カタカナの概念だけを社内に示しても理解しづらいので、私たちが事業の中に入って一緒に作業することで、組織を変えていくことができると思います」

社内のITリテラシーを高めるだけでなく、さらに、CDOの社会的責任について言及するのは、三菱ケミカルホールディングスの岩野和生である。

もう後戻りはできない

2017年、三菱ケミカルホールディングスにCDOとして招聘された元日本IBM執行役員の岩野和生は、東京基礎研究所所長や米ワトソン研究所などを経て、政府の科学技術振興機構の上席フェローを務める65歳のベテランだ。ITの歴史とともに生きてきただけに、「水先案内人としての責任」を説く。

なぜなら、日本と世界との間にズレが生じているからだ。

「1990年代から日本の企業はIT部門を丸々外注する文化が定着しました。システムインテグレーターとしてITサービス会社が、設計から保守管理までを一括して請け負い、それが10年、15年と続いています。企業が勉強しなくてもいいわけです。その間に、世界ではユーザー企業が外注せずに自らが主体となって、ITでサービスを組み替えるなど、大きな差が生まれました。AI、ビッグデータ、クラウドなどが進化している現在、この2─3年がポイント・オブ・ノー・リターン。手を打たないと後戻りできない時期に来ていると思います。将来に向けた布石を打たないと、会社も国も競争から脱落してしまいます。我々IT業界の人間は、『こういうことが起きますよ』と、企業や社会に伝え、どういう価値観を追求するか、議論する社会的責任があると思うのです」

丸投げ・下請け構造の「ITゼネコン化」と呼ばれる日本特有の文化から脱却することはチャンスにもなる。それに気づいた経営陣がCDOを導入していると言えるだろう。

前出CDO Clubの加茂純によると、まだまだ日本企業でCDOを導入する企業は少なく、アメリカのCDO Club側がインドやシンガポールに支部をつくることは許可したのに、「日本はまだCDOが少ない」という理由で当初は組織化に難色を示したという。また、CDOが既存事業に介入していくため、社内から反発を食らうことが想像されるが、加茂は苦笑して言う。

「もともとCDOは抵抗勢力が当たり前の世界で生きてきた人たちが多く、軋轢や問題を打開することが好きな人たちでもあるんです」

CDOに共通するのは、現場にわかりやすく伝えたり、一緒になってブレストをするのが好きな人が多い。CDOが現場と信頼関係を構築できれば、「日本の時代が来るかもしれません」と、岩野は言う。

日本初のCDO、日本ロレアルの長瀬次英もこう話す。

「CDOという役職がなくなり、デジタル化が特別なことでなくなったときが勝ちでしょうね」

文=藤吉雅春

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