ビジネス

2017.12.16

東大発ベンチャー起業家が説く、「起業のすすめ」

出雲 充(左)、漆原 茂(右)


e

起業の方がリスクが低い


出雲:最近の東大生はどうですか?

漆原:「起業をしたいのですが、経験をどこで積めるのでしょうか」と聞く学生も増えてきています。ただ、実際起業にもっていける人材があまりに少ない。ベンチャーキャピタルなど、お金の調達手段は増えているのに。

出雲:どうしたら人材が増えるでしょう。

漆原:起業の方が楽しくて、むしろリスクも低いということを証明するしかない。

出雲:そう。リスクは低いですよね! 子どもたちは一生懸命勉強していますが、今存在しない職業につくためには、今の教育は何の意味もない。世の中が変わる時に新しいことをやることが一番リスク軽減となります。

経済全体が成長して人口が増えていた時代では、他の人と同じことをするのが最適解でした。経済が成長せず人口も減っている現在、新しいことをやるというのは、リスクをミニマイズするということですね。その変化にみんながついてきていないだけ。ベンチャーはリスクが高いとよくいわれるけれど、大企業だって潰れています。

漆原:若者がリスクと思わない大企業こそ大変です。100年存続する企業がどれくらいあるかと聞かれたら、実際とても少ない。50年続いた会社が次の50年続くとも言えない。むしろ成長が止まってしまう大企業はリスクが大きいと思います。

起業の成功の鍵は、若手が「下克上」できる分野

漆原:僕がどうしてITを好きかといえば、若手が下克上できる分野だからです。昔の人がずっといて、既成のルールの中でしか活躍できないとしたら若手が勝てるわけがない。でもITやゲノム、バイオなど新しいビジネスルールが産まれるところでは、「やってない」おじさんが何を言おうが「やっている」若手の方が偉いんですよ。

ある先端技術を1年やれば、やってないおじさんがとうてい及ばないビジネスインパクトのあることができる。若手にも平等にチャンスがあり、追い抜くこともできる分野はとてもおもしろいですね。

出雲:そういう世界はローリスク・ハイリターンですね。ただ技術分野には若手が活躍できる分野とできない分野があるかと思います。たとえば、自動車業界のように、優秀な技術者が大勢いてそれが強みになっている産業にベンチャーは入りにくいし、下克上は難しいですね。

漆原:そのとおりだと思います。ただ、たまに非連続的に生まれる市場がありますよね。そのタイミングに乗れるとおもしろい。難点はキャリアを積んでいないとチャンスを見出しにくい点。そこで薦めたいのが中途キャリアの起業です。僕自身も大手で経験を積んでから、「これだ!」と思って起業しました。そういうキャリアがもっと増えるといい。35歳以上のキャリアは転職ではなく、起業が当たり前、という世の中になるといいですね。


漆原 茂◎ウルシステムズ株式会社 代表取締役社長。1987年に東京大学を卒業。1989年からスタンフォード大学研究所客員研究員。2000年に戦略的ITのコンサルティング企業、ウルシステムズを設立し、代表取締役社長に就任。2006年ジャスダックにIPO。シリコンバレーの最新動向に精通し、先端テクノロジーとベンチャーをこよなく愛するエンジニア。

出雲 充◎株式会社ユーグレナ 代表取締役社長。1980年広島県生まれ。東京大学に入学した98年、バングラデシュを訪れ深刻な貧困に衝撃を受ける。2002年東京三菱銀行に入行。05年株式会社ユーグレナを設立し、東大発バイオベンチャーとして注目を集める。同年世界初のミドリムシ屋外大量培養に成功、ミドリムシ食品を事業化し、化粧品やバイオ燃料など幅広い分野での展開を目指す。

インタビュー=谷本有香 構成=星野陽子 写真=藤井さおり

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事