ビジネス

2017.11.27

大企業とベンチャーはWin-Winの関係を構築できるのか

INNOVATION LEADERS SUMMIT「大企業とベンチャーはWin-Winの関係を構築できるのか」


谷本:大企業において新規事業を成功に導くのは非常に難しいと思いますが、どのように推進していったのかお聞かせください。

東急 加藤:社長の野本弘文がイノベーターであることが一番大きいと思います。日本の大企業はトップダウンの傾向が強いので、トップがメッセージを発信することで、他の大企業ももっとオープンイノベーションの動きが活性化するのではと考えています。

谷本:トップのコミットメントは、成功にとって重要だと思われますか。

野村HD 八木:大変重要だと思います。トップの永井含め、弊社の経営陣からは、新しいことにどんどんチャレンジしろと言われているのですが、その大本にあるのが2000年に出てきたネット証券や、今まさにフィンテックという新たな動きが出ている中で、判断ミスをすると倒れてしまうという危機意識なんです。その意識がトップにあるので、サポート体制含めて非常に現場はやりやすいんです。

富士通 徳永:そうですね。ただ、何年もやっているとコミット度合いが弱い時期もあります。しかし、そのときに止めてしまうと社内からも信用されなくなるので、「イノベーションに対して私はコミットしています」という姿勢を社内外に見せ続けることが大切です。いつもメンバーには「キャラ立ちしましょう」と伝えています。

谷本:新規事業開発にはリスクや失敗がつきものですが、どのような評価制度があれば良いと考えますか?

東急 加藤:イノベーションがいつ、どんな状況で起こるのか予測がつかないので、募集や審査の件数にノルマを設定してしまうと、それをこなそうとして何も生み出せなくなってしまいかねません。弊社では、プログラム最終段階である業務提携の件数をKPIとして置いているだけですね。

KDDI 江幡:弊社では、業務提携の件数や、それによっていくら売上を作ったか? という指標は置いていません。それよりも、提携先の企業がしっかり成長し、企業価値が上がるような活動になっているかをチェックされています。私たちが関わることによって、どの部分でどんな貢献ができているのか、明確な説明が求められます。

谷本
:ベンチャー企業を見る際、どのような目線で選出していますか。

富士通 徳永:弊社は協業成立をゴールにしているので、事業プランのテーマ設定からディレクション、協業検討まで、一貫して責任をもって取り組んでもらっています。事業部の課題ありきの目線でベンチャーを探しているので、協業成立につながりやすい仕組みになっています。

谷本:事業以外でベンチャーのケミストリーってありますよね。ベンチャー企業と付き合う上で気にされていることはありますか?

KDDI 江幡:まず、自分たちの会社にないものを持っている方々という理解をすること。弊社のトップも言っていますが、「ベンチャーファースト」という考え方です。よく陥りがちな、大企業が搾取するとか、何かを教えてやろうという態度は全くありません。

また、服装も気をつけています。お互いが一番話しやすい格好・スタンスで臨むためには、ベンチャー企業の方々がしているようなラフな格好の方がいいんです。また、私たちの方からスタートアップにお邪魔したほうが、その会社の本質もわかるので、こちらから出向こうという活動もしていました。

野村HD 八木:服装は本当に重要。昨年、色々イベントに出たり、ベンチャーの方と接していて一番感じたのが我々の服装なんです。このスーツにネクタイ。完全に浮くんです(笑)。

これはイカンと思って、人事部に特別申請を出して、クールビズみたいな緩い服装を許してくれと言いました。それで許可が降り、社内のミーティングでもポロシャツみたいな格好で行ったら、「今日、お前休みなのか」「何だ、そのふざけた格好は」と当時は色々言われましたが、1年くらい経つと皆も慣れるもので、最近は何も言われなくなりました。

富士通 徳永:スタートアップとお仕事する時にはスピード感も気をつけています。会って互いにすごくいいなと思っても、それぞれの足りないものを埋め合うことにならないケースもあると思うんです。

その時は、ウジウジせずにはっきりと、こういうところが合わないからサヨナラってしたほうが、相手にとっても良いわけです。それを日本人独特のお作法で、曖昧にしてしまうのは一番ダメ。だから私はいつも「意思決定が遅い男はダメ」「曖昧な男はダメ」って言ってるんです(笑)。
次ページ > スタートアップは子育てに似ている

構成・写真=筒井智子 モデレーター=谷本有香

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事