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2017.11.19

日本に悲観論を蔓延させる「未来予測本」への違和感

Ned Snowman / Shutterstock.com


技術革新は、普段は気づかないがとてつもなく大きく重要な分野に生かされている。食料生産である。人類の主食は麦や米などの穀物。往古の野生時代には決して生存能力の高い植物ではなかった。それが人間の平地開拓、開墾、肥料、連作技術、害虫駆除などで飛躍的に生産量を増やしてきた。

最近では、砂漠の耕地化や土地改良、開墾技術の進歩はもちろん、高度な耕作技術や栄養学の応用、さらには遺伝子工学までが活用されている。世界の穀物生産量は、1970年の10億8000万トンが今や25億トンを越えている。

漁業の世界の技術にも目を見張る。世界に誇る「近大マグロ」のおいしさはもちろんだが、養殖対象の魚種が飛躍的に増えてきた。しかもいまや養殖というよりも栽培漁業である。温泉水でフグを養殖し、陸地でヒラメを繁殖させている時代なのだ。

わが農林水産省は、「2050年の全世界の食料需要量は69.3億トンと将来の世界人口予測の1.5倍を上回る1.6倍の水準に達する」と予測しているが、これを支えていくのが農業とその関連技術であろう。

昨今の国際情勢を見て、リバイアサン的な世の中になるのではないか、と懸念する心境は理解できる。会話が通じない国々と向き合わなければならない現実もある。確かに、手放しの楽観論には与しえない。

だが過剰な悲観論、慎重論はもっと危険である。アベノミクスは楽観と強気を真骨頂とする。ここにきて声高な批判が喧しくなっているが、やはり日本人は悲観主義者なのか。多くのテロ事件を手がけた危機管理の専門家、佐々淳行氏はこう喝破していた。

「危機管理の要諦は、悲観的に準備して楽観的に対応することだ」

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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