ビジネス

2017.11.28 08:30

好業績のHOYAを支える世界基準のガバナンス


──実際の取締役会の雰囲気は。

何でも自分の思ったことを自由にいえる取締役会だ。初の社外取締役の椎名さんが、次の社外取締役を選ぶ際に「忌憚のない意見をいう経営者」を基準にされ、社外取締役のみの指名委員会に、よき文化が連綿と引き継がれているからだろう。

提案内容に疑問を呈されることもあるが、必ず理由がある。長年経営に携わった経験に基づきながら、貴重なアドバイスを社外取締役からもらえ、提案内容のブラッシュアップに活かしている。

──コーポレート・ガバナンスの観点から見た取締役会の「真の役割」とは何か。

顧客、社会、社員など様々なステークホルダーがいるが、本質的な会社のオーナーは株主。その意向に沿った経営ができることが最終的なガバナンスの姿。そう考えると、企業価値の大きな毀損などがあった際に「社長を解任すること」だと思う。

当社の社外取締役はあくまでも株主の代理であり、株主の利益が著しく傷つくようなことがあれば、私の解任を躊躇なく決議するだろう。その結果、傷は浅く済み、再生がしやすくなるはずだ。

「取締役会は社内取締役主導がいいか、社外取締役主導がいいか」とよく聞かれるが、どちらでも構わない。重要なのは、いざというときに株主の立場になって冷静に判断できるかどうか、だ。まさにそのことがコーポレート・ガバナンスの根幹であり、中長期での企業価値の向上へつながるのだと思う。


すずき・ひろし◎1958年、東京都生まれ。東洋大学経営学部、米国メンロー大学卒業後、85年HOYAに入社。同社取締役、常務、専務を経て、2000年に代表取締役社長に。同社シンガポール支店代表も兼任する。5、7代CEOの鈴木哲夫氏は父。

HOYA◎光学機器・ガラスメーカー。売上高4789億円。うち、6割がメガネ・コンタクトレンズ、医療用内視鏡などのライフケア系。4割が半導体・液晶パネル、HDD用部材などの情報通信系。半導体製造用材料はシェア世界一(7割)。海外生産比率75%超。従業員3.5万人のうち9割が外国人。

文=伊藤博之

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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