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2017.11.20 16:30

新旧大小の壁を超えた融合を生む「仕組み」の秘訣

(左から)三井化学R&D戦略モビリティ担当 市川太郎、rimOnO代表取締役社長 伊藤慎介、三井化学研究開発本部合成化学品研究所リサーチフェロー 山崎聡

(左から)三井化学R&D戦略モビリティ担当 市川太郎、rimOnO代表取締役社長 伊藤慎介、三井化学研究開発本部合成化学品研究所リサーチフェロー 山崎聡

「大企業にもかかわらず、これほど一体感とスピード感でプロジェクトを共に進められることに、いつも驚かされる」

日本発の布製超小型電気自動車を開発するスタートアップ・rimOnO代表取締役の伊藤慎介は、三井化学をそう評する。

2015年3月、三井化学の社内プロジェクトでの出会いをきっかけに、共同プロジェクトを開始。三井化学では、営業利益の約40%を占めるモビリティ部門において、自動車産業の構造転換への危機感があった。16年5月、プロトタイプ1号を発表。現在は、量産型自動車では利用されたことのない素材を提案・提供し、市販化に向けた開発を進めている。

三井化学がスタートアップと密に連携できる秘訣は、社内の仕組みづくりにある。福田伸常務執行役員は、開発現場での小さなチャレンジを可能にする組織設計と予算制度の改革を推進。各研究所の持つ素材や技術を横断的に活かすため、rimOnOとの窓口をR&D戦略室に一本化。所属を超えた連携体制を整えた。

「合言葉は『着眼大局、着手小局』。面白いアイデアがあれば、最短1か月でプロトタイプを作製できる体制だ」(R&D戦略室・市川太郎)

さらに、「未来の自動車を造る」というプロジェクトの持つ面白みが、研究者たちの意欲的なコミットメントを引き出す。

「自動車に使われたことのない素材の実装は技術的ハードルも高く、やりがいを感じる。『面白そうだ』という理由から社内の幅広い人材、時には取引先の方までが参画し、チームの輪は自然と広がっている」(合成化学品研究所・山崎聡)

トップダウンで構築した仕組みを基盤に、プロジェクトの魅力で人を巻き込み、スタートアップ並みのスピード感を実現。今後も、公道走行試験車の製作に向け、さらに連携を深めていく予定だ。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=ヤン・ブース

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