ビジネス

2017.11.23

社長の急逝に戸惑う社員を一つにした「伝説の経営者の教え」

クボタ 木股昌俊 代表取締役社長


──全社の目標として売上高2兆円を掲げた。当初は17年12月期に達成する計画だったが、今期は1.68兆円の見込み。

多くのお客様に信頼されることが先決だ。事業分野の中で、最も社会へ貢献できると評価される企業になれば、売り上げはその後についてくる。農機・建機分野で世界トップのジョン・ディアは売上高3兆円規模。いきなり抜けるほど甘くないので、まずは2兆円が目標だ。今期は、前年の排ガス規制の駆け込み需要の反動や、タイの天候不順の影響があって、まだ2兆円には届いていないが、各地で投入している商品の評価は高い。

具体的な戦略として、米作用は深掘りする。インドやミャンマー、インドネシア、フィリピンは進出して間もなく、ラインナップが不足。ラインナップの充実と機械化率のアップが重なれば、グッと伸びるだろう。

畑作用の成長分野は大型機械。一昨年から販売を始めてヨーロッパでは順調。他に中国、中南米、トルコの市場に期待だ。北米市場はさすがに手ごわい。製品は認知されているが、大型の販売やサービスの経験があるディーラーが少なく、教育に時間がかかっている。ただ、北米でも大型の数字は伸びている。近ごろジョン・ディアが、逆に当社が得意にしている100馬力以下に力を入れてきた。うれしい悲鳴だが、踏ん張りどころだ。

「機械を売る」の先の先まで考える

──ターニングポイントでは何を基準に決断をするか。

創業者の久保田権四郎は、伝染病を防ぐために水道の整備が始まった時代に水道管製造に着手した。以来、メーカーとして、食料、水、環境分野での事業を通じて社会に貢献するというミッションを大切にしてきた。この姿勢は社員全員に浸透している。

たとえば農機についても、単に機械を売るだけでなく、いかに農業の生産性を上げるのか、ひいては食糧問題の解決を図っていくのかということを考えて売っていく。事業という意味ではフォーカスする領域など変化していくが、この底流に流れるものを変えるつもりはない。


きまた・まさとし◎1951年、岐阜県生まれ。77年北海道大学工学部卒業後、久保田鉄工(現クボタ)入社。2001年、筑波工場長。05年取締役。10年サイアムクボタコーポレーション(タイ)社長などを経て14年4月副社長。同年7月より現職。

文=村上 敬 写真=佐藤裕信

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事