ビジネス

2017.11.17

「原点」に戻り「未来」を見据える 10年後に向けた旭化成の変革

旭化成 小堀秀毅 代表取締役社長 兼 社長執行役員


──中期経営計画は折り返し地点を過ぎたが、現状をどう捉えているか。

信頼回復に向けた取り組みは粛々と進めている。成長戦略については、これまでにはなかった自動車分野において部門横断的なマーケティング組織を立ち上げたり、各研究開発部門で旭化成のコア技術の棚卸しを行うなど、複数の活動が進んでいる。キーワードである「コネクト」も浸透してきた。また、今年4月からは、個別最適の意識からグループ全体の将来に対する意識に切り替えるため、事業本部長クラスを集めたミーティングを増やしている。

──中期経営計画で「クリーンな環境エネルギー社会」「健康・快適で安心な長寿社会」への貢献を掲げている。事業活動を通じた積極的CSRを掲げた理由は。

これからの企業のあり方を考えた時、社会における企業の存在意義とは何か、を改めて問い直した。そこで出した答えは「社会への貢献」であり、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します」というグループ理念に今一度戻ることだった。

そう考えると、今、世界では地球温暖化などの環境対応が求められており、我々は数多くの貢献できる技術、製品群を持っている。一方、日本で高齢化が進むなか、健康で快適な長寿社会に寄与する事業を創出すれば、将来的にグローバルに展開できる可能性がある。この両面で「社会的な価値」を生み出せば、「高付加価値型事業」として成長が期待できる。

杭問題は会社存続の危機だったが、「存在意義」や「付加価値」について我々の原点を見つめ直し、立ち返ることを通じて、変革のはじまりとなった。私が大事にしている言葉は「有言実行」「知行合一」。自ら率先して行動していくことが重要だ。現場、現実、現物を見極めながら、自分の言葉で話し、意見交換し、会社全体でこの変革をさらに進めていきたい。


こぼり・ひでき◎1955年、石川県生まれ。78年神戸大学経営学部卒業、旭化成工業(現・旭化成)入社。2012年4月旭化成常務執行役員、6月取締役兼常務執行役員。14年代表取締役兼専務執行役員。16年4月より現職。

文=増田忠英 写真=佐藤裕信

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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