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旭化成 小堀秀毅 代表取締役社長 兼 社長執行役員

2025年という「未来」を見据えて変革の真っ只中にある、総合化学大手・旭化成。試行錯誤したリーダーがたどり着いたのは企業理念という「原点」だった。

2015年10月に発覚した子会社の杭工事施工データ流用問題は、旭化成グループへの信頼を大きく揺るがせた。

翌年4月に就任した小堀秀毅は、就任後発表した中期経営計画(Cs for Tomorrow 2018)で、10年後(25年)の旭化成グループのあるべき姿を「収益性の高い付加価値型事業の集合体」とし、目標として売上高3兆円(15年度1.9兆円)、営業利益2800億円(15年度1652億円)を掲げた。

その実現のため、18年までの3年間を「多角的な事業・多様な人財の結束(コネクト)で飛躍の基盤をつくる」期間と位置づけ、純粋持株会社制から事業持株会社制へと体制再編に踏み切った。10年先を見据えた変革の鍵は、「原点回帰」にあった。


──社長就任時、何を課題として捉え、どのように変革を進めようとしたのか。

杭工事問題に関する社会からの信頼回復。持続的成長のために10年先を見据えた成長戦略。この2つの使命をやり遂げる覚悟で臨んできた。

杭工事問題が起きた背景には、現場で行われていることに対する従業員の注意や関心の薄れがあった。そこで、「現場」に赴き「現物」を確認して「現実」を知るという「三現主義」の徹底を打ち出した。さらに、コンプライアンスを徹底するための体制も整備した。

成長戦略に関しては、旭化成は過去12年間、純粋持株会社と9つの事業会社制でやってきた。その中で、各事業会社が自主自律で最適経営を行い各業界での地位を築き、13〜15年度は過去最高益を更新した。しかし、10年先を考えると、各事業会社の伸びしろはそう大きくない。むしろ、今後はIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などより従来の産業構造が複合化し、そこから新たな成長領域が出てくることを見据え、キーワードとして「コネクト」を打ち出した。

独立していた組織を統合し、旭化成の「総合力」を活かすことで、新たな成長ステージに向かおうと考えたからだ。とはいえ、長年続いた体制を急に変えるのは難しい。そのため、中期経営計画では、10年後を見据え、次の飛躍に向けた基盤づくりの3か年と位置づけた。旭化成の多様な経営資源を結合して、新市場を創出していく考えだ。

──12年間続いた体制を見直すことに対して、社内の抵抗はなかったか。

社長になる前は経営戦略担当役員だった。その頃から、グループ内の連携意識の希薄化や、人事交流の減少、研究開発における事業ごとの分断が見られ、事業化のスピードが世の中の変化から遅れていることを感じていた。そこで、中期経営計画発表の1年前に、経営体制の変更を社内外に発表し、準備を進めてきた。

文=増田忠英 写真=佐藤裕信

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