ビジネス

2017.11.24

「共感を呼ぶ会社」を目指すデンソー有馬社長のビジョン

デンソー 有馬浩二 取締役社長


──自前の技術に強みがあるが、一方で他社との連携、協業も活発だ。

自前には限界がある。メカ系は研鑽を重ねてレベルを上げてきた自負があるが、ソフトは非連続な進化であり、過去の蓄積があまり関係ない。これからはハードとソフト、両方がきちんとやれるメーカーでないと信頼されない。われわれはソフト部分の経験値が少ないので、外部の優秀な知恵も取り入れていく必要がある。

豊田佐吉翁は「障子を開けてみよ。外は広いぞ」といった。私が入社した三十数年前は会社の規模が小さく、外を見てベンチマークしていた。しかし組織が大きくなると、分業化が進んで視線が内向きになってしまう。内部組織を活性化させるためにもオープンイノベーションを進めていく。もちろんトップが社長室で寝ていては説得力がない。私自身、シリコンバレーにも足を運び、感性、感度を高めている。

──何を基準に経営判断していくか。

決断は、断つことを決めると書く。やることを増やすのは簡単だが、断つことを決めるのは覚悟が必要だ。それでも決断するのがトップの仕事だ。断つことを決めてやるべきことを絞れば、退路が断たれて危機感も醸成できるだろう。

──守り続けるもの、変えていくものはどのように判断するか。

先人から受け継いだデンソースピリットは絶対に変えてはいけない。従業員の率直な意見も踏まえて定められた社是のひとつに「研究と創造に努め常に時流に先んず」があるが、今こそ大事。一方、実現するためのやり方は柔軟に変えていく。

──今後のビジョンは。

世界になくてはならない企業を目指す。だからこそ、売り上げや利益の目標は頭の中にあるが、あえて公表はしない。「自動車関係で、そこそこやっている」で終わらずに、自動車で培った技術をそれ以外の事業にも活かして、「デンソーがやっているなら納得だ」と皆様から“共感いただく会社”を目指していく。共感は、製品だけでなく、従業員一人ひとりの姿勢、目つき、言動からも生まれる。理想は、みなさんが当社にきたとき、「圧倒される」「ちょっといいよね」という「気」が漂う組織だ。そうした人間の集団であるかぎり、どのような変化が起きても打ち勝っていける。


ありま・こうじ◎1958年、愛媛県生まれ。81年京都大学工学部卒業、日本電装(現・デンソー)入社。2005年デンソー・マニュファクチュアリング・イタリア社長。08年デンソー常務役員。13年生産革新センター長。14年専務役員。15年より現職。

文=村上 敬 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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